アベノミクスを支持していた若年層が自民を見限った
安倍晋三政権の間、自民が高い支持率を保ったのは、高齢者保守層が支持したためと見られがちだが、そんな中でも若年層が自民を支持していたことが大きかった。「就職氷河期」の上の世代を間近に見ていた若年層は、アベノミクスによって企業収益が改善し、就職環境が劇的に改善したことを評価していた。今回はその層が自民を見限ったのである。背景に、物価上昇の中で給与が上がらず、生活が苦しくなっていることがあるのは言うまでもない。
今回の選挙の結果は、おそらく、今後の若年層の投票行動に大きな変化をもたらすに違いない。有権者の人口構成では圧倒的に高齢者が多いため、若年層の意向が選挙では反映されにくい「シルバー民主主義」と呼ばれる状況に、若年層は白けてきた。どうせ投票に行っても自分の意見は通らない、無駄だから投票には行かない、というわけだ。ところが、今回、国民民主が躍進し、自民を中心とする与党も立憲を中心とする野党も過半数を握れない中で、はからずも国民民主がキャスティングボートを握る格好になった。
「日頃は投票に行かない人たち」が選挙結果を左右する
国民民主が与党の連立に入らずに、政策ごとに是々非々の対応を取るとしたことで、俄然、「103万円の壁」の“選挙公約”の実現性が高まった。結局、自民公明は、国民民主との協議で103万円の壁の引き上げを受け入れることを了承した。冒頭の毎日新聞の調査は、この後に行われているから、「103万円の壁」問題で国民民主の「成果」が大きく評価されたことが支持率躍進につながったと見ていいだろう。自分たちも声を上げれば、自分たちが求める政策が実現する、それを若年層が痛感したことで、彼らの政治参加意識が高まっていくのは間違いない。
兵庫県知事選挙が異例の盛り上がりを見せた背景には日頃は投票に行かない人たちが、SNSに刺激されて投票に行ったことが影響したとされる。まさに、こうした層の動きが選挙結果を大きく左右する事態になってきた。
103万円を引き上げることでは合意したものの、実際の引き上げ幅は決まっていない。税制は自民党の税制調査会で決まり、それがほぼそのまま政府税調で了承されて決まっていく。ところがこの自民党税調は幅広く議論をする場ではない。「インナー」と呼ばれるベテラン議員が事実上、決定する仕組みで、インナーの議員の多くは財務省出身議員など、財務省の意向に従う議員で占められている。