毎日新聞「全国世論調査」の衝撃

毎日新聞が11月24日に公表した全国世論調査の結果は衝撃的だった。石破内閣の支持率が31%と前回の46%から急低下、不支持が50%に上昇して支持を上回ったことばかりではない。政党支持率で自民党の21%に次ぐ2番目に、立憲民主党(12%)ではなく、国民民主党(13%)が躍り出たことだ。前回の調査で国民民主の支持率は3%だったから、まさに「大躍進」を遂げたのだ。毎日新聞の調査は与党に厳しい結果になる傾向があるため、他の調査とは乖離かいりがあるが、弱小政党だったはずの国民民主に支持が集まっていることは間違いない。

もちろん、理由は「103万円の壁」に対する同党の主張だ。10月末の衆議院総選挙で国民民主は、所得税が課税される103万円の最低基準を178万円に引き上げることで「手取りを増やす」と訴えた。一般の働き手にとっては103万円の壁は馴染みが薄いが、学生アルバイトやパートで働く人にとっては大きな問題になってきた。

「103万円の壁」の引き上げなどで合意し、文書を持つ(左から)国民民主党浜口、自民党小野寺、公明党岡本の各政調会長=2024年11月20日午後、国会
写真提供=共同通信社
「103万円の壁」の引き上げなどで合意し、文書を持つ(左から)国民民主党浜口、自民党小野寺、公明党岡本の各政調会長=2024年11月20日午後、国会

特にアルバイトをしている19歳以上23歳未満の学生は、103万円を超えると税金が課されるだけでなく、生計を共にする親が受けていた63万円の「特定扶養控除」が受けられなくなり、親の手取りも減る。これをわかっているので、103万円を超えないように、働くのを止めてしまう。これが「壁」と言われる理由だ。また、パートで働く妻も103万円を超えると夫の配偶者控除の対象ではなくなるから、妻の所得税だけでなく、夫の税金にも響くわけだ。

20代、30代からの支持を集めた国民民主

国民民主党がこの議論を始めてから、財務省など政府は年収が103万円から1万円増えても所得税は500円しかかからない、といったキャンペーンを始めた。だが、前述のように本人の所得税だけの問題ではなく、家族全体の所得が減ることを、アルバイトする学生やパートで働く妻はよく知っているのだ。だからこそ、国民民主の主張が「刺さった」と言えるのだ。

前期の総選挙では、若年層に国民民主の主張が響いたことが鮮明になった。日本テレビ系列と読売新聞が行った出口調査では、比例代表の投票先は20歳代、30歳代で、いずれも自民党を国民民主が上回り最も多い投票先となった。20歳代の場合、自民への投票は19%、立憲民主は14%だったのに対して、国民民主は26%を占めた。30歳代は自民20%、立憲民主13%に対して国民民主は22%に達した。60歳代が自民26%、立憲25%、国民民主8%だったのと比べると投票行動がまったく違ったことは明らかだ。それだけ若年層に「103万円の壁」引き上げが評価されたということだろう。