「品行方正ライダー」がなぜ被害に…

天気は雨だった。

クルマはセンターラインを越えて逆車線に侵入。そこにあきの自転車が突っ込んだ形となった。

許し難いのは、当初、加害者ドライバーは「止まっていたところに自転車が突っ込んできた」と警察にウソを言っていたことだ。そんなのドラレコ見ればすぐに分かるのに。

対してこちらは「ヘルメット装着」「傘ではなくカッパ着用」「スマホはズボンのポケットの中」「イヤホンなども一切着けていない」「車道左端走行」「時速20~25キロ」と、品行方正ライダーを絵に描いたような状態だった。

なんの落ち度もない。それなのに不意に目の前から現れたクルマのせいで、顔の下半分グジャグジャという苦しみを味わわなくてはならなくなった。

加害者本人とは、たった一度だけ電話で話した。こちらからかけた電話に対して、彼は「保険会社に任せてあります。失礼しまっす、失礼しまっす」というばかり。それ以前も以後もなんのアクションもない。心証は最悪だ。

廉価なヘルメットでも頭を守ってくれる

今後、刑事・民事の両面で、加害者ドライバーを追い詰めていくことになるが(上記以外にも「自転車がスマホながら運転をしていた」という、さらに許しがたいウソをついていたことも後日判明した)、それは本稿の書きたいことからいささかズレるので、ここでは言うまい。

驚くべきは自転車ヘルメットの効用のことだ。PP(私)は自転車の専門家だから、常日頃から「とにかくヘルメットをかぶるんだ」ということをあきに口酸っぱく言ってきた。

写真=筆者提供
2015年、「自転車ヘルメット委員会」(代表:馬場誠)の発足記者会見にて。右端が筆者

だから、彼は常にかぶっていた。白い野球帽の上にOGK KABUTO社の白い「CANVAS-URBAN」。これが彼のオーディナリーなスタイルだった。この「CANVAS-URBAN」は決して高級なヘルメットでも何でもない。数千円の街乗り用・廉価品だ。

写真=筆者提供
息子がかぶっていたヘルメット

しかし、頭蓋骨の上下を較べてみればよく分かる。頭蓋骨の下半分の被害は甚大なのに、上半分はほぼ無傷なのだ。このことがどんなに彼の「今後のクオリティ・オブ・ライフ」に貢献することになるか。

写真=筆者提供
手術後3日目で顔がまだパンパンに腫れているが、顔に傷を残さず中の骨が再建されている。執刀医は「神の手」の持ち主だった