大谷翔平もメジャー挑戦を表明していたが…

ただ、日米20球団と面談した後、熟考を重ねた結果、憧れだったメジャーへの挑戦を一時封印。会見では「日本一の投手になってから挑戦したい」と大粒の涙を流した。周囲の重圧や一部の批判とともに、前年に設けられた「田澤ルール」も、挑戦の足枷になった。

ドラフトでは6球団競合の末、西武に入団。2017年に16勝で最多勝、2018年も14勝でチームの10年ぶりリーグ優勝を置き土産に、2019年、マリナーズへと入団した。涙の決断から10年。日本一の投手になるという約束を果たし、その後、ブルージェイズから今季途中にアストロズへと移籍。チームの地区優勝に大きく貢献した。

菊池騒動から3年後の2012年。同じ花巻東に大谷翔平という怪物が現れた。投げては160キロ、打っては高校通算56本塁打の二刀流は、ドラフト会議の4日前にメジャー挑戦を表明。多くのNPB球団が指名を回避する中、日本ハムがドラフト1位で指名を強行した。

大谷は驚きながらも、「アメリカでやりたいという気持ちは変わらない」と、入団拒否の姿勢を崩さなかったが、栗山英樹監督(当時)が「大谷翔平君 夢への道しるべ」と題した全27ページの資料を持参。1時間半にも及ぶプレゼンテーションに心を動かされ、メジャー挑戦を翻意し、日本ハムへと入団することになる。

大谷すらできなかった偉業を成し遂げるか?

ルーキーイヤーから投打二刀流で活躍。2016年には日本一を経験し、2018年にメジャー挑戦の夢を叶えた。昨年はエンゼルス、そして今年はドジャースで2年連続本塁打王に輝き、ワールドシリーズ制覇に大きく貢献。名実ともに世界一の選手となった。右肘手術からの復帰が見込まれる来季、再び二刀流で活躍する姿をファンも待ち望んでいる。

2024年4月24日、ナショナルズパーク ナショナルズ対ドジャースでの大谷翔平選手(写真=All-Pro Reels/CC-BY-SA-2.0/Wikimedia Commons

森井も大谷に憧れ、二刀流を志した一人だ。菊池も大谷も、高卒でメジャー挑戦を熱望しながらも、日本のプロ野球で技術を磨き、海を渡った。もし2人が18歳から米国へ行っていれば、どのような成長曲線を描いていたのか。今となっては知る由もない。

大谷の活躍もあり、若いうちからメジャーを志す選手も今後は増えるだろう。ただ、高校卒業後に即米球界へ挑戦し、メジャー昇格を勝ち取った日本人選手はこれまでいない。森井の挑戦は、後に続く選手たちの道標となる。

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