腕利きが集まる「俺の店」の魅力
「俺のイタリアンJAZZ」の料理長で、「俺の」の取締役を務める山浦敏宏が、人材紹介会社を通して坂本と会ったのは2011年7月。イタリアの3つ星レストランなどに勤務経験がある山浦は、坂本の話を聞き「面白いな」と純粋に感じた。
「低価格の店に抵抗感を持つ料理人は多いんです。マニュアルさえ作ってしまえば、パートのスタッフでも厨房を回せてしまうわけです。だから、社長の料理人を大切にしていく姿勢に魅力を感じました」
そう語る山浦は、坂本社長の熱意に押されるように、11年7月に「俺の」に入社。2カ月後に「俺のイタリアン新橋本店」をオープンさせた。
「最初の1カ月はガラガラ。それでも社長はぶれなかった。食材は絶対にケチらないで、と」
いま俺のシリーズは順調に出店数を増やしている。この3月には和食の「俺の割烹」がオープンする予定で、イタリアやフランスへの出店も視野に入れる。坂本はいう。
「山浦さんのような人に来てもらえたおかげで、優秀な料理人が集まるようになりました。経営は綱渡りでしたが、料理人が自信を持って腕を振るう場をつくることができた」
腕に覚えがある料理人たちが誇りを持ち「俺の店」を切り盛りする。その一方、各店の繁盛ぶりは日報により他店の料理人たちに知らされる。だからこそ、自社内での競争が生まれるのだ。毎晩届く日報が、チェーン店の固定概念を覆す原動力になっていた。
(文中敬称略)