知らない人になりきって店を見てみる

まずは、お店から少し離れた場所から、あなたのお店を見てください。

初めてのお客が「入ってみよう」と思うようになっていますか?

さらに近づいて店頭を見てください。不要な貼り紙はありませんか?

さらにゆっくりと、初めてのお客の目線で店内に入ってください。

それから、いろんな席に座って、注文した商品を待っているお客の気持ちで店内を見回してください。

オープンしたとき、コロナ禍で大掃除をしたときと比べて、汚れているところはありませんか?

エアコンの吹き出し口が黒ずんでいませんか?

壁に貼られているポスターに油が沁み込んでいませんか?

こうしてゆっくり見直すと、改善点が見つかります。

改装しなくても「A(雰囲気)」は改善できる

続いてA(雰囲気)についてお話しします。

私の創業塾では、最終回に「コンセプトシート」というものを提出してもらい、内容について協議するようにしています。このシートの中にはオープンしたいお店のQSA(どんな商品をメインにして、価格はこれくらいなので接客レベルはこうして、食事する空間はこんな感じ、といったこと)を書き込む場所があります。

女性の参加者は、雰囲気の欄をびっしり書き込んでいることが多いです。一方、男性は雰囲気の欄が弱いです。

ただ、食事をする空間は重要です。最近はキャンプに行って食べる「キャンプ飯」が流行っています。外出先なのであまり手の込んだことはできませんし、調理にも時間がかかります。でも、開放された自然空間の中で食べるので、おいしく感じます。同じ料理を自宅で作って食べたら、「ほかの選択肢もあったな」と感じる人が多いと思います。

店内の雰囲気作りですが、構成するのは6つの要素です。

難波三郎『小さな飲食店のお客が減らない値上げ』(秀和システム)より

まず、お店全体のイメージを決めるのは、①色と、②質感でしょう。

質感は、たとえば同じ木目でも、使用材によって伝わるイメージが変わります。それが店格と合っているかがポイントです。

③の照明ですが、明るさによってイメージが変わりますし、間接的な照らし方にすると高級感が出ます。

④の香りですが、この6つの要素は小売店も含めた店作りで考察された考え方なので、項目として入っています。宝石店など高級品を売る小売店でアロマを使用したりするのがよい例で、少し高めの雑貨店でも同じ取り組みをしています。

飲食店でいうと、街中のうなぎ店のように、調理中の香りを店外に流れるようにして誘引するという例もあります。

ただ、料理以外の香りを客席で使用するのは難しいでしょうし、調理中の香りを客席に届けるにはお金がかかりますし、油が回る可能性が高いです。こうした取り組みを考えるよりは、嫌な臭いを抑える、つまり不満足度を減らすことを考えるといいでしょう。