刑務所ごはん』では一般的な家庭用の調理機器を使って、刑務所の味の再現を目指した。複数の元受刑者に試食してもらい、食感や盛り付けについてもアドバイスを受けた。家庭で再現する際には「水を多めに加える」、「長時間じわじわと過熱する」、「とにかく薄味に徹する」ことを意識することで、多少は刑務所の味に近づけられるかもしれない。

三食のうち最もバリエーションが多い昼食

刑務作業に従事する受刑者にとって、最大の活力源となるのが昼食だ。主食の中心が麦飯であることは変わらないが、パンや麺類といった食欲をそそる変化が期待できる。三食のなかで最もメニューのバリエーションが多い。

パンといえば獄中ではコッペパンだが、これは市販のものより大型だそうだ。炭水化物のカロリーが生む熱量が、一日の労働の糧となる。パン食の日が嬉しいという声は多く、出所後はパン屋になりたいと夢想する受刑者も珍しくないようだ。

コッペパンを主食としたメニューが出ることも。甘く似た小豆の“ぜんざい”は人気メニューの一つ(左)、ソーセージはパンに挟んでホットドッグ風にも(右)。(写真=名和真紀子 料理=田内しょうこ)

刑期を終えればまた、外の社会でどうにかして生計を立てていかなければならない。その後の生活の手段を不安視する受刑者が多いのは想像に難くないが、では一体どうすればいいのか? さまざまな理由から前科を持つに至った者にとって、その不安が小さくないであろうことは想像に余りある。

社会に受け入れられなければ、またなにか過ちを犯してしまうのではないか。長い服役生活のなかでそんな不安が募る。社会復帰に向けた教育をもっと充実させてほしいという受刑者の意見は切実だが、実情は及ばない。

生まれ落ちた家庭環境、経済状況、そのようなあれこれを悔やんでも、いまさら自分ひとりではどうすることもできない。出所できたとしたところで、過去の人間関係を頼るほかないのだとすれば、またこの道に引き戻されてしまいかねない。