肉は調理前に必ず一度茹でる、野菜類は冷凍のカット野菜……。獄中の200人に行ったアンケートから浮かび上がる“塀の中”の食事事情とは――。

※本稿は汪楠、ほんにかえるプロジェクト『刑務所ごはん』(K&Bパブリッシャーズ)の一部を再編集したものです。料理の写真は、同書の調査を基に料理家が再現したものです。

昼食メニューを再現したもの
刑務所内の昼食メニューを再現したもの。左は生揚げのカレー、右はキャベツと鶏肉のレモンバター「炒め」がメインディッシュにあたる。(写真=名和真紀子 料理=田内しょうこ)

煮物のように水っぽい「炒め料理」

写真(右)はある日の昼食の再現イメージ。キャベツと鶏肉のレモンバター炒め、野菜のチーズサラダ、缶詰のみかん、という副菜の献立だ。

衛生面を配慮してのことだろうが、肉は調理前に必ず一度茹でることになっているという証言があった。大きな鍋に湯を沸かしたとしても、直前まで冷蔵庫に保存されていた大量の肉を投入すれば、湯の温度は一気に下がる。茹でるあいだに脂も肉汁も抜け出てしまうだろうから、旨みが損なわれるのは避けようがない。炊場での調理は基本的に大きな蒸窯を使っておこなわれるため、「○○炒め」というメニューであっても高温の火力で勢いよく炒められたものではないし、そもそも炒められていないような気がする。

野菜類は冷凍のカット野菜が使われることが多いが、これも調理の過程で水が出やすい。価格が安定している、下処理が少なくて済む、衛生的であるなど、さまざまな利点があるのだろうが、「歯ごたえがない」などといった不満につながる一因だろう。炒め物とは名ばかりで、実際は「水気が多くて煮物のようだ」と嘆く声もあった。