認知症のポジティブな面を知っておく
「認知症にだけはなりたくない」と、認知症になることがこの世の終わりかのようにとらえている人は多いと思いますが、認知症になってもまだまだやれることはたくさんありますし、医師の見解としては、ポジティブな面も大いにあると思っています。
認知症の症状が進んだ人ほど、嫌な記憶がなくなるせいか、ニコニコと温和な性格になり、多幸感にあふれているような印象を受けます。老人ホームなどでも、患者同士でレクリエーションを楽しんでいたり、職員とにこやかに会話をしていたりといった光景をよく目にします。
周囲がいくら不憫に思っていたとしても、当の本人が幸せでいられるのならば、それに勝るものはないのではないでしょうか。
また、かつては偉そうな態度だった人も、認知症が重くなると、いつしか誰に対しても敬語で丁寧に接するようになっていきます。
先にお伝えしたように、認知症になると防御反応が高まりますから、失敗やトラブルを起こさないように、相手が誰かわからなくても、ひとまずあらゆる人に丁重に接しようという意識になるのです。結果的に、朗らかでソフトな印象を与える、まさに理想的なシニアになっていきます。
認知症は誰もが経験する老化現象であることに加え、このような側面も持っています。であればこそ、「なったらなったでよい面もあるかも」という意識を持つことで、過度に怖れることはなくなるのではないでしょうか。