内親王だと眞子元内親王しかいない

伊勢神宮が皇室と深い縁で結ばれており、皇族がおりにふれて参拝に訪れている現状からすれば、愛子内親王や佳子内親王、あるいは、皇室のニュースターとなった彬子女王などが適任と思われるかもしれない。

しかし、現在では、政治と宗教を分離しなければならないという政教分離の原則が強調されるようになっている。現役の皇族が、民間の一宗教法人となった伊勢神宮の祭主をつとめることは相当に困難である。終戦直後には、伊勢神宮を当時の宮内省の管轄下におく構想が打ち出されたが、それは実現されなかった。

となると、皇族の身分を離れた内親王や女王が候補として浮上する。内親王だと眞子元内親王しかいない。

2020年の眞子元内親王(写真=外務省/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

女王になると、高円宮の典子元女王と絢子元女王の姉妹がいる。

典子元女王は、出雲国造である千家家に嫁いでいる。神道の家ということでは伊勢神宮に関係する。ところが、明治時代に国が設けた神道事務局に出雲大社の祭神、大国主を祀るかどうかで神社界を二分する大論争が起こった。そうしたこともあり、典子元女王が伊勢神宮の祭主をつとめるのは難しいだろう。

伊勢神宮の祭主が消滅する恐れ

となると、絢子元女王になる。彼女の夫は民間人であり、その点で、祭主に就任することに格別の差し障りは出てこない。

けれども、元女王であり、元内親王よりも天皇との血縁上の距離は遠い。黒田氏が2親等であるのに対して、絢子元女王は6親等である。民法では、6親等内の血族が親族と定められているが、ぎりぎりである。

現在、国会の論議は、女性宮家の設立を認める方向にむかっている。もし、現在の内親王や女王が、女性宮家として皇族にとどまったら、伊勢神宮の祭主となる可能性のある元内親王や元女王が今後生まれないことを意味する。

その点では、本来、眞子元内親王が、将来における伊勢神宮の祭主や神社本庁の総裁に適任だったはずなのである。

神社界は、貴重な人材を失ってしまった。

そのことは、伊勢神宮や神社本庁の権威を失わせる方向に作用するかもしれないのである。

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