森永 いまはどんな治療を受けておられますか?
岸 昨年、自家造血幹細胞の移植を行いまして、現在は定期的な検査・注射と毎日の薬で治療が続いています。
森永 造血幹細胞移植は健康保険適用になるんですか?
岸 適用になりますが、全部はカバーされていなかったように思います。
森永 保険適用で高額療養費制度を活用した後で、ざっくり言うと毎月の医療費はどれくらいになりますか?
岸 いま現在ですと、すべて適用した後で毎月20万円弱の支払いがあります。
森永 なるほど……そうすると、全然払えないという金額でもないですね。
岸 自分の生活ではなんとかなっていますが、収入が低い方の場合、大変な出費だろうとは思いますよね。
「来年の桜を見るのは無理でしょう」
森永 私の話をしますと、がんとしてはものすごくレアなケースなんです。去年の11月に体重が落ちてきたことに主治医が気づき、そのアドバイスで人間ドックを受けたところ、CTの画像で肝動脈(肝臓に血液を送る血管)のまわりにモヤモヤとした影が写ったんですね。それを見て、検診をしてくれた病院の医師が「これはがんからの侵襲で、すでに転移しているのだから、ステージ4だ」と言うわけです。同時に、「このままだと来年の桜は見られないでしょう」とも言われました。
岸 いきなり、そんなことを言われたんですか。
森永 その後、どこにがんがあるのかを調べるPET検査を受けたところ、反応があったのは胃とすい臓だけだった。そこから徹底的に胃を調べましたが、どんなに検査しても何も出なかった。一方、すい臓を見てもどこにも病変がない。まったくきれいなままで腫瘍マーカーも正常値を示している。結局、胃がんでないことだけは100%確実だから、消去法ですい臓がんだろうという診断になりました。
岸 すい臓がんですか。
森永 すい臓がん、ステージ4、余命4カ月。だから、今年の桜は見られないだろうという結論は変わりませんでした。
岸 しかし、なんとか見ることができましたね。同じがんを患う者として、森永さんの生命力と執念には感服します。
森永 私は疑り深い性格で、最初の診断に納得しなかったものですから、がんの画像診断の名医中の名医と呼ばれている順天堂大学の先生に診てもらいました。結果はやはり同じで、すい臓がん、ステージ4でした。それでも私はまだ信用できなかった。
岸 すごいな、それは。
森永 その後、国立がん研究センターで、これも画像診断の名医と言われる医師にデータを診てもらったところ、そこでも同じ結論が出た。さすがに専門家3人が同じ診断を下したことで、医学知識のない私は抵抗することができなくなりました。
岸 やっと受け入れる気持ちになったわけですね。
〈「このままでは確実に死ぬな」立てない、食べられない、水も飲めない…“余命4ヶ月の森永卓郎(67)”が直面した「がん治療トラブル」の正体〉へ続く