「宇宙」はもともと建築に関する文字だった

「うかんむり」はもともと家屋を表していた(出所=『部首の誕生』)

建築・土木に関係する部首も少なくない。まず「宀」であるが、殷代には⑦の形であり、家屋を表していた。左右の縦線が壁であり、上部のくの字が屋根である。その後、東周代に棟(屋根の頂上部)を強調した⑧となり、隷書の⑨で上下方向に縮められて楷書の「宀」になった。カタカナの「ウ」に形が近く(厳密には「ウ」が「宀」を変形したもの)、また文字の上部に置かれるため「うかんむり」と呼ばれる。

部首としては家屋に関係して使われ、「宅」や「室」などの例がある(それぞれたくが声符の形声文字)。

意味が変わった文字も多く、例えば「容」は、原義が「建物に収容する」であるが、一般に「いれる」として使用され、さらに「なかみ(内容など)」や「かたち(容貌など)」の意味にもなっている。また「寄」は「建物に身を寄せる」の意味であり、そこから一般に「よる」や「よせる」として使われる(それぞれこくが声符の形声文字)。

また「宇」と「宙」は、「宇」が「のき」や「やね」を意味して用いられ、「宙」は「屋根に使われる木材」が原義とされる。いずれも家屋の上部にあることから、高くにある「宇宙」として使用された(それぞれゆうが声符の形声文字)。

 

「写」は「物を移す」様子を表していた

「寮」は「りょう」が声符の形声文字であり、本来は役所を意味していたが、現代日本では学生や社員の宿舎の意味で使われている。また「写」は旧字体が「寫」であり、意符の宀と声符のせきから成る。「家屋の中に物を移して置く」が原義であり、そこから「書き写す」の意味で使用された。

会意文字の用例も多く、例えば「安」は家屋の中で女性が安静にしている様子であり、「やすらか」の意味を表す。また「字」は、家屋の中に子供がいる様子から「子孫繁栄」を表している。漢字は既存の文字を組み合わせて新しい文字が作られることから、子孫繁栄になぞらえて「字」が文字の意味で使われた。

そのほか、「宗」は家屋を表す「宀」と祭祀に関係することを表す「示」から成り、祖先を祀る宗廟を表している。また「宿」は、「宀」と「人(亻)」、および敷物の形から成り、人が宿泊する様子を表している(楷書では敷物の形が「百」に同化している)。

「宝」は旧字体が「寶」であり、複雑な字形である。これは、家屋(宀)の中に貴重品である「貝」や「玉」を納めた状態を表しており、そこに声符としての「」を加えた構造である。缶は土器の象形なので、これも含めて「宝物」ということであれば亦声に該当する。