つねに自分の頭で、物事の本質を見極める姿勢が大事
ちょっと考えてみてほしい。国内一般には定期預金金利で史上最安の0.1%しか利用者に還元せず、かたや新興の諸外国の最優良企業には、5%とか7%の高い金利で貸し付けしているのだ。
こんなボロい商売があるだろうか? 絶対に株価400円はおかしい。そう考えたから、一気にまとめて三菱UFJ銀行の株を買った。
当時はまだほとんど誰も見向きもしていなかったが、その後どんどん上がって、買った値段の3倍以上になった。配当利回りも10%近くあるから大変な額だ。
なんだか自慢話のようになってしまうのが嫌だけれど、言いたいのは物事を自分の頭で考えることがいかに重要かということだ。
一流の証券会社の社員が揃って言っていたことでも、先ほどのような間違いがある。専門家が言っているから、メディアが報じているから正しいと鵜呑みにしていたのではダメなのだ。
つねに自分の頭で、物事の本質を見極める姿勢が大事だということだ。
私自身はこの力をコンサルタントとして研鑽を積む中で、自ずと磨いてきたと考えている。
逆に言えば、しっかりとしたコンサルタントからコンサルティングを受ければ、本質的な視点で企業を捉え、その問題点を鋭く指摘してもらえるということだ。
企業にとって、そのメリットは計り知れないものがあると考える。
真のコンサルティングは未来を見据えることができる
BCGの創始者であるブルース・ヘンダーソンとは、まだ自分がBCGに入る前、三菱商事に在籍していたときに、ある人を介して初めて会った。
食事をしながら話していたら、なぜかとても気に入ってもらえたようで、その縁でその後BCGに入ることになったわけだ。
この人はじつに癖がある人で、とにかく議論を吹きかけてくる。それで、うまく答えられないと、「まだまだお前は半人前だ」と一喝する。それが面倒に感じる人は離れていくのだが、私は面白がっていた。それがブルースにも通じていて、気に入ってくれたのかもしれない。
あるとき、彼が来日して軽井沢のゴルフ場を朝早くに2人で歩いていた。
突然、「ここにある若葉のどれが松の木になる若葉で、どれが雑草なのかわかるか?」と聞いてきた。「わからない」と答えると、「だから、お前はダメなんだ」と言う。「そんなものがわからなくて、どうしてコンサルタントなんてできる?」と。
また始まったなと思ったが、「そもそも植物学者じゃないのだから、そんなことはわからなくて当たり前ではないか?」と返した。
しかし、これが彼流の比喩的な教えで、「いいか、そういうことではなくて、コンサルタントは5年先のことをリアルに考えなければダメだということだ。わかるか?」と言う。
いまの時代、10年先までは技術の進歩が速くてなかなかわからない。ただ、5年先は大学や企業の研究室が何を研究し、どんな開発を行っているかを見れば、5年後に実用化されるものはかなりの確度でわかるはずだ。
いきなり若葉の話をし出すから何かと思えば、要はコンサルタントの本質を比喩的に教えてくれたのだ。
コンサルタントは、5年先まではしっかりと見据えていなければならない。しかるべき情報をキャッチして、ロジカルに推論すれば自ずと見えてくるはずなのだ。だから株の話に戻って恐縮だけれど、株式投資もまさに5年先を見据えれば、株価が上がる株が自ずと見えてくるのだ。
コンサルタンティングも本質は同じだと思う。
5年後の世界がどうなっているか? ブルースの言葉に従って未来を捉えることが、コンサルティングの真の力だと言えるだろう。