退園し、自宅で保育

岩元さんはやるせなさに震えた。

「こんな小さな子どもに、大人たちがいじめみたいなことをするんだ、と思いました」(岩元さん)

岩元さんが市の保育幼稚園課に相談、仲裁を頼んだところ、またしても園長やPTAの役員ら6人が職場に現れた。役員らは、「あなたのせいですごく傷ついている」と岩元さんを責め立てた。

「親子でこれ以上、嫌な思いをするのは耐えがたかった」(同)

岩元さんはその日のうちに退園を決心。小学校入学までの半年間は自宅で保育した。

学校は「差別」を抑止すべき

PTA問題に詳しい大塚玲子さんによると、非加入会員の子どもへの差別は①物品を渡さない、②登校班などの活動に参加させない、という2つのパターンがあるという。もちろん、「どちらの差別にも強く反対します」と訴える。

「全国の複数の教育委員会は『非加入会員の児童に対する差別禁止』の通達を学校長に出しています。学校はPTAがそうした差別を行うのを止めるべきですし、抑止力になるべきです」(大塚さん)

だが、それでも暴走した正義感は歪みを生む。千葉県在住のヨウコさん(仮名、40代)は数年前、小学校PTAで本部役員になった2年目に、信じられない現場を何度も目の当たりにした。

ヨウコさんがPTAの本部役員になった理由は、「子どもたちのために何かできればいいなと思った」からだ。2年の任期のうち、1年目は平穏に過ぎた。だが、翌年、AさんがPTA本部の実権を握ると、雰囲気が一変した。

「押しの強い人で、仕切り屋。意に沿わない意見が出ると、形相を変えてバサッと切るんです」(ヨウコさん)