「コスパの高いインテリア雑貨+家具の店」という品揃え

ここまで圧倒的な存在となった背景は、製造物流IT小売業(図表3)として、自社商品を海外でコストを抑えて生産し、ITと自社物流のインフラで一気通貫されたサプライチェーンを構築したことで、コストパフォーマンスの高い(「お、ねだん以上」と表現している)家具、インテリア商品を提供しているから、である。

ただ、この凄い仕組みの話は、いろいろなところで語られているので、あえてここでは触れない。それよりも、なぜ、ニトリだけが製造物流IT小売に進化できたかを取り上げたい。それは、ニトリが家具店ではなく、コスパの高いインテリア雑貨+家具の店という品揃えを選んだことにある。「?」だと思うので、この点について説明したい。

ニトリの店舗は、1階にインテリア雑貨、キッチン用品などのいわゆるホームファッション(家周りの様々な小物雑貨類)が並び、2階以上に家具などの大物が展示されている作りになっていることはご存知であろう。一般的に家具を買いに行く、という機会はどのくらいか思い出していただきたいのだが、普通は月に1回行くかどうか、という感じではないだろうか。なので、家具を見に行くだけの店ならば、そんな頻度でしか消費者は来店しないだろう。

1階の雑貨群で女性消費者の心をつかむことに成功

しかし、家周りの生活雑貨類や消耗品も揃えたニトリの1階は、週単位で買物に来てくれる品揃えになっている。この1階があることで、ニトリは普通の家具店の何倍も来店してもらうことができる。その上、その商品は十分にコスパが高いため、徐々にリピーターを増やしていくことができた。同業比、圧倒的な来店頻度を獲得したニトリは、来店した顧客の家具探索のタイミングに2階に上がってもらうことで、家具のコスパも伝えることができた。ニトリの成長のカギは1階の雑貨群にあったのである。

図表1をもう一度見てもらうと、2000年以降に、売上の増え方が急加速していることがわかるだろう。この時期、女性の免許保有率が上がり、軽自動車の普及が急速に進んだことで、地方の女性消費者がパーソナルカーという機動力を持ち始めた時代と重なる。コスパの高い雑貨類を備えたニトリは、まず雑貨で女性消費者の心をつかむことに成功した。そして、実質的には家庭の財布を握っている女性消費者の家具購入タイミングをつかむことができた。ニトリは雑貨を撒き餌として、単価の高い家具需要をも、一気に取り込んでいくのである。並行してサプライチェーンの効率化を進めたニトリは、商品のコスパで他社の追随を許さない域まで進化、マーケットで圧倒的な地位を確立したのだ。