最高に危険なのは「歩道を右側通行」

ところが問題は⑤の自転車だ。この⑤の自転車は、ドライバーにとって、交差点に出てくる直前になるまで、まったく見えない。

そして、この⑤自転車が突然キュッと出てくる際に起きる事故、これこそが「出会い頭」なのである。

中でも、最高に危険なのは、この⑤自転車が、歩道を走っている場合だ(画像3の⑤’自転車)。

筆者提供
【画像3】⑤’歩道を右側通行する自転車がもっとも危険

出会い頭の事故が起きるのは必然

この⑤’自転車は、クルマにとって最も視認しにくい自転車であり、なおかつ最も距離的にクルマに近い(つまり危険に近い)自転車になってしまう。

さらにいうなら、歩道というものは、電柱、ポスト、電話ボックス、看板、駐車車両、ほかさまざまな障害物に紛れて見えにくくなっているし、加えて、ドライバーの心理も「歩道は別領域」というものになってしまって、いわば「心理的な目」が覆い隠されてしまっているといえる。このことが⑤’自転車をいっそう危ないものとする。

⑤、そして⑤’の自転車が、ドライバーの死角からいきなり出現して起きる事故。クルマはこれを避けることができない。これこそが出会い頭の本質であり、自転車が右側通行をしている限り、この事故は必然として起きているのだ。

筆者撮影
【画像4】センターラインのない道路を右側通行する自転車。その先の交差点で右側からクルマが出てきたら…

「必然として起きる事故」というのもすさまじい話だと思うんだが、ただ、このことは日本人は誰しも薄々と知っている。

その証拠と言うべきだろう、交通安全教室などでよく出てくるスタントマンの再現(スケアード・ストレイトという)は、必ず自転車が右側を走っている。そうでないと誰もリアリティを感じないからだ。

こんなことがいつまでも放置されている。それが日本の自転車を取り巻く現状なのだ。