「うま味調味料は化学的な合成品」は誤り

皆さんは、家庭で料理するときに、うま味調味料を使っていますか。

食品に関する授業で、うま味調味料を使っているか否かの質問をすると、「うま味調味料は、化学的に合成されたものだから、使用しない」という誤った考えを持っている学生が多くいます。

また、うま味調味料は使用しないが、顆粒タイプの「和風だしのもと」のような風味調味料は使用していると答える学生がいます。うま味調味料は、どのようにして作られるのでしょうか。

うま味調味料は、アミノ酸系うま味物質のグルタミン酸ナトリウム(MSG)と、核酸系うま味物質のイノシン酸ナトリウム(IMP)/グアニル酸ナトリウム(GMP)の混合物からできています。

2種類以上の異なるうま味物質が混合されているのは、「うま味の相乗効果」を利用しているからです。MSG、IMP、GMPがそれぞれ単独で存在するよりも、MSGとIMP/GMP(IMPとGMPの混合物)が共存しているほうが、うま味物質の効果が強くなるのです。

MSGとIMP/GMPを1対1で混合すると、うま味物質の効果が最も強くなります。

ちなみに、MSGの製造コストはIMP/GMPよりも安価です。それぞれの味質を生かし、市販のうま味調味料では、MSGにIMP/GMPを1~2.5%配合したものを低核酸系うま味調味料、6~12%配合したものを高核酸系うま味調味料としています(図表5)。

商品例は、低核酸系うま味調味料が「味の素」(味の素株式会社)、高核酸系うま味調味料が「ハイミー」(味の素株式会社)や、「いの一番」(三菱商事ライフサイエンス株式会社)です。

「うま味調味料の配合」

「うま味調味料」は“発酵”で作られたもの

MSGとIMP/GMPは、いずれも化学合成ではなく、発酵法で製造されています。発酵法は、ヨーグルトやみそなどの製造方法と同じで、微生物の力で製造する方法です。

さとうきびからとれた糖蜜とうみつに、アミノ酸生産菌(Corynebacteriumglutamicum)を添加すると、この微生物が糖蜜中の糖を使って発酵液中に大量のグルタミン酸を作ってくれるのです。

酸性物質であるグルタミン酸を含む溶液を中性にすることでMSGになります(図表6)。また、IMP/GMPも同様の発酵法で製造されています。

さとうきびの糖蜜を発酵させてうま味調味料が作られるまで 「発酵法によるグルタミン酸ナトリウムの製造法」
西村敏英『おいしさの9割はこれで決まる!』(女子栄養大学出版部)

うま味調味料は香りがないので、単独ではけっしておいしいとはいえません。一方、風味調味料は、うま味調味料をベースとして作られているのですが、カツオ節などの香りが付与され、単独でもおいしく感じられます。

両方で使用されているうま味物質はまったく同じ発酵法で作られています。「風味調味料は天然物だけれども、うま味調味料は化学製品であり健康的ではない」という考えは、事実とは異なります。いずれの調味料も安全性にまったく問題はありません。

うま味調味料は、香り物質が添加されていないので、適量を使用することでほかの食材の風味をじゃませずに、素材の特徴的な風味の感じ方を強めることができます。適量を意識しながら日常の料理に利用してみてください。

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