唐辛子、ナンプラー、酢、砂糖で味変

辛さについてはタイ生活が長いヤマモリトレーディングの長縄がこう教えてくれた。

「日本人はタイカレーをご飯にかけて、それで一食にしますが、タイの人たちは白いご飯にグリーンカレーをかけるだけではありません。その横に煮物をつけたりして、3品くらい一緒に食べるわけです。

そして、タイの食堂に行くと、卓上には唐辛子、ナンプラー、酢、砂糖の4種類の調味料が必ず置いてある。タイの人たちはおかずに唐辛子、砂糖などを追加して調味して食べます。辛さが足りないと思ったタイ人は唐辛子をどんどんかけます。タイの料理だからといって最初からめちゃくちゃに辛い味つけになっているわけではないんです」

筆者撮影
タイ料理に欠かせない生の唐辛子。緑のほか赤や黄色の唐辛子もあり、それぞれで味わいや辛さの度合いが異なる

そう言った後で、長縄は付け加えた。

「ただ、そうはいっても庶民がいく食堂や屋台のおかずはやっぱり日本人には辛い。日本人がおいしいと言うのはカニが入ったプーパッポンカレーでしょう。これはタイカレーのなかではいちばん辛くないんです」

髪の毛一本が落ちることも許されない工場へ

食品工場へ入るにはまず全身、着替えなくてはならない。髪の毛一本でも混入すると工場の機能が止まる。厳格なチェックがある。そして、ユニフォームを着て、靴を履き替え、ネットをかぶったうえで帽子をつける。もちろんマスクは必須だ。それからコロコロのゴミ取りで衣服のごみを取り、エアーシャワーの部屋を抜け、靴の裏まで消毒する。

工場内の掲示板には英語とタイ語で、「安全委員会」「品質安全会議」「改善活動」と並んで「防虫委員会」という表示があった。日本の食品工場でも防虫には気を遣っているのだろうが、タイの場合は虫の種類が多いのかもしれない。委員会が虫を監視して建屋に入れないようにしているのだろう。

工場内にはハラル対応と非ハラルの2種の製造ラインがある。タイカレーの製造はハラルのラインだ。ハラルとはイスラム教の教えで「許されている」という意味。ムスリムは豚肉やアルコールを口にしないで生活しているので、それに合わせて調理したものを製造する。

ハラル対応と非ハラルの区画は厳密に分けられている。ふたつの区画は入り口、出口も別だ。また、働く人間もどちらかの区画内と決まっている。

そしてタイカレーの製造ラインは次のようになっている。まず、材料の洗浄、選別、カット、ボイル、炒めの各工程がある。最後にタイカレーのソースと鶏肉などの具材を一緒にする。レトルトパウチ製品にして加熱、殺菌してできあがり。ヤマモリのタイカレーは具材が大きいので、鶏肉などは従業員が1人前のカップに1食分を手作業で入れる。洗浄やボイルなどはほぼ自動化しているが、具材の投入工程だけは人がやらなくてはならない。