高い頻度で語られる「顔」「胸」「尻」

「目」や「手」といった単語に関しては、「駄目」「手紙」や「目につく」「手がかり」などといった記述も数多く抽出されるため直接的に性的な言及をされているものばかりとは限らないが、「顔」や「胸」「尻」などは高頻度で出現する。

先行研究が検討したほかの女性誌においても、こうした部位に関する言及は数多く見られるが、先行研究にあって『ビックリハウス』にない部位としては「膣」「クリトリス」といった性交や自慰とより強く関連する部分が挙げられる【*4】

また、言及のされ方も、性体験や異性との関わりを主題とした他の女性誌とは大きく異なる。『ビックリハウス』では、以下のような記述が多数を占める。

兄が「お前よりボインだも〜ん」と胸をはって言った
(読者投稿、19歳・女性、『ビックリハウス』1984年11月号、55頁)

少女のようなオッパイさすり、BH[ビックリハウス]教養・文芸・知的・ローカル線を、多少ナマリながらも、歩き始めました。多大のご声援を。(K)
(編集者コメント、『ビックリハウス』1978年3月号、160頁)

「笑い」や「卑下」で語られる身体の言及

これら『ビックリハウス』の記事に対して、先行研究が示した「胸」に関する言及は「彼が私の髪の毛やまだ未発達の胸に触れると、自分が360度異なった人間になっていくような気がした」【*5】(『モア・リポート』)のようなもので、他誌と比べ『ビックリハウス』の投稿者や編集者は身体の特徴を「笑い」や「卑下」とともに語る傾向があることがわかる。

身体に関する言及のほとんども、性体験とは関係なく「誰かこの脂肪をもらって下さい! ニンシンしてません 単なる出腹です」【*6】「私の顔の体積はバスケットボールの1.8倍あります」【*7】(読者投稿)といった、自らの容貌を低く評価する、いわゆる「自虐」的な内容であることも特徴的であり(406件中112件)、読者投稿も女性編集者による記事も同様の性格をもっている。

他誌のように、身体の部位を性交や自慰と関与させながら語った記事は、406件中3件(性交)、8件(自慰)ときわめて少なく、比較的多い内容としては「私、女の人の裸を見るとアソコがうずいて濡れるのがわかる」【*8】「生理の直前になると、オッパイが張って、自分でも困るくらいスケベになります。異常体質ですか?」【*9】(読者投稿)といった、性交や自慰にいたらない性欲の発露(406件中51件)がある。

写真=iStock.com/Natalia Shabasheva
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