「変化の激しい時代になった」のは本当か
最近は、未来が予測できない、変化の激しい時代になったとよく言われるようになった。
たしかに、1988年に商用化がはじまり1990年代後半から一気に普及して世界を変えたインターネットや、2000年代に入ってから新興国にも一気に普及した携帯電話ネットワーク、2007年に発売されたiPhoneに始まるスマホが現在では年間10億台以上出荷されていることなど、誰が予測できただろう。
一方で、世界を巻き込むような戦争は1945年以来80年近く起きておらず、1929年に始まった世界恐慌のような世の中が失業者で溢れるような混乱も起きていない。
医療環境を考えても、「世界子ども白書2023」によれば2021年の世界の新生児死亡率は1000人あたり世界平均で18だが、日本では1だ。
平均寿命も日本では1955年に男性で63.6歳、女性で67.75歳だったものが、2023年時点では男性が81.05歳、女性が87.09歳となっている。
厚生労働省が毎年発表している「簡易生命表」の令和4(2022)年版を見ると、男性では64歳までは死亡率が1%を下回り、死亡率が10%を超えるのは、87歳以降だ。
今ほど予測可能性が高い時代はない
保険制度が整備されたことで、突然の病気や事故などで生活が破綻するようなことも少なくなって、失業や病気で収入が減っても一定の社会保障制度が機能するようにもなっている。
日本ではGAFAは生まれなかったが製造業は生き残り、アメリカのような中間層の崩壊も、絶望死のような社会問題も起きていない。
また、AIの発展によりさまざまな事象が予測可能になり、特定のコンビニのお弁当の売り上げからアメリカ大統領選挙の結果まで、かなりの精度で予測できるようになっている。
これらは、実は今ほど予測可能性が高い時代はないことを示唆している。
生まれれば、若くして死ぬ可能性は低く、生きている間に社会が大混乱する可能性も低く、大学に行った場合の生涯年収の予測も大きくはずれない。
世界や日本の将来を予測することは難しく、来年の選挙の結果の予想も当たらないが、来年の自分の生活はかなり正確に予測できる。その予測とは、来年の今日は、だいたい今日と同じ、だ。個々人にとっての未来は、おおむね今日の延長にある。
そして、日本では、まだまだ新卒一括採用と年功序列と終身雇用は根強く生き残っていて、失業率も低く、不動産価格についても1990年頃にバブル崩壊が一度だけあったが、その後は持ち直している。
だとすれば、自分の子どもに、オオタニやビヨンセのような才能があると思って、その才能に賭ける自信があるのでなければ、住む場所を慎重に考えることを含めて、子どもの学力を高める努力をすることは、子どもの将来の選択肢と成功確率を高めるだろう。