健康的なライフスタイルは「実現できない特権」

博士らは結論に以下のように議論しています。

米国がん協会(ACS)、米疾病対策予防センター(CDC)、世界保健機関(WHO)は、がんのリスクを減らすための一連の予防行動を提唱しています。

これらには、「タバコやアルコールの使用を減らすこと、身体活動を増やすこと、食習慣を改善すること、母乳育児を推進すること」などが含まれます。

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しかし「所得格差、保険未加入、食の沼地や食の砂漠、建築環境の欠陥、その他の要因」で、すべての人が健康的な食生活を送り、活動的に過ごすことは難しい。

これらの調査結果を総合すると、「健康的なライフスタイルは、米国の多くの人々にとって、基本的な権利というよりも、程度の差こそあれ、実現できない特権である」ことがわかります。

ライフスタイルの格差が、世代間のがん罹患率の上昇や、他の研究における平均余命の低下をどの程度説明しているかは不明で、さらなる研究が必要です。

ところで最近、世界中で「早期発症がん(early-onset cancer)」、つまり14歳から49歳までに診断されたがんが増えています。

“50歳未満のがん”は過去30年で約80%増加

昨年の英医師会雑誌に、浙江大学医学部やハーバード大学、エディンバラ大学などの研究者らは、過去30年間(1990年から2019年)で、世界中の50歳未満の新規がん患者が約80%も増加していると報告しました。

この分析は、2019年の世界疾病負担調査のデータを基にして、204カ国の14歳から49歳の人々のがんの罹患率と死亡率の変化を調べたものです。2019年は、50歳未満の100万人以上ががんで死亡し、1990年から約28%増加しました(3)

さらに研究者らは、この傾向に基づいて、2030年には世界の新たな早期発症がんの症例数とそれに関連する死亡者数が、それぞれ31%と21%増加し、最も多いのは40代と推定しました。

2019年、最も多くの死亡者数とその後の健康状態の悪化をもたらしたがんは、乳がんに次いで、気管・気管支・肺がん、大腸がん、胃がんでした。