例ではカレーとサラダとプリンを作るという一大事業を挙げましたが、まずは「カレーとサラダを作る」とか「企画書作成と溜まったメールの返事をする」など、やりやすい内容でシングルトラックを引く練習をしてみてください。
慣れてくれば、3タスクでもシングルトラックに落とし込めるようになり、そしてそれを実行できるようになりますよ。
繊細な人ほど「自分はダメ」と思い込む
繊細な人は「自分は理解が遅い」「物覚えが悪い」と思い込むことがあります。仕事の資料やマニュアルなど、初めて見る情報をインプットするとき、スムーズに頭に入ってこなくて「ダメだなあ」と落ち込んでいませんか?
それは、理解力や記憶力が足りないせいではありません。原因の一つは、感受性が豊かだからです。個々の情報が頭の中で響きすぎて、そこに自分の連想も加わり、雑然と混ざり合ってしまうことがあるのです。
もう一つ、さらに大きな原因となるのが、緊張です。リラックスした状態で読んだ本は、スッと頭に入ってきませんか? 反対に、「難しそうだ」などと身構えながら読んだ本は、集中できなくて投げ出してしまいませんか?
資料やマニュアルでも、同じことが起こります。マニュアルを読むということは、その仕事は初めてなわけです。つまり、緊張しやすい状況だということです。
「ちゃんと覚えないと」「早くできるようにならないと」と思いながら読むため、プレッシャーに頭を占領され、肝心の情報が入ってこないのです。
敏感でも緊張しやすくても、きちんと理解するワザは「自分マニュアル」です。もとのマニュアルを、自分用に書き直すという方法です。と言っても、内容を変えるわけではありません。自分がわかりやすい表現にアレンジする、ということです。
「自分マニュアル」のススメ
たとえば、ざっと駆け足で説明されている部分を、細かい手順に分けて書く。
逆に、繰り返し書かれた情報や、冗長と感じた表現はシンプルに省略する。
堅苦しい単語を、同じ意味のカジュアルな単語に替える。
文章が長くてわかりづらければ、箇条書きや図にする。
ほかにも、「自分なら、こう表現するけどな」と思ったことがあれば、どんどんアレンジしましょう。その過程で―つまり「自分マニュアル」完成前の段階で、早くも理解が深まっていくのを感じられるはずです。
この方法は、私が研修医時代に実践していたものです。病院備え付けのマニュアルがまったく頭に入らず、苦し紛れに始めたことでしたが、予想以上の大当たりでした。