政治はケンカだ

「なんで中核市だとあかんねん。人材育成の研修ができない理由にならんやろ」と言っても、「ダメです」の一点張り。そこで作戦を練り、政治力も使って厚労省にガンガン働きかけたところ、ついに「中核市の市長5人の連名で要望書を上げてもらったら、改正する」というところまでこぎつけました。

泉房穂『さらば! 忖度社会 崖っぷちニッポン改造論』(宝島社)

そこで、中核市の市長たちに「名前を貸してくれ」と電話をかけまくって賛同を得て連名の要望書を出し、ようやく中核市での研修を実現できる段取りを整えました。力技で押しまくっていってようやく勝ち取ったのですが、「都道府県と政令市のみ、と書かれています」の一点張りの壁を突き破るのは大変でした。

しかし粘り勝ちです。「書かれています、じゃないやろ。お前らが書いたんやろ。中核市にはできないという合理的な理由がないんやから、変えればいいんや」と押しまくって、明石市は晴れて、放課後児童支援員の資格研修を実施する全国初の中核市となりました。

だから、政治はケンカなのです。ケンカせずに、周囲と協議しながら仲良く物事を進めようとしたら、結局は既得権益に絡め取られ、役所の職員の「お上至上主義」「横並び主義」「前例主義」に埋もれていって、方針転換もできず、有権者と約束した公約なんて実現できるわけがないのです。

「グーチョキパーの関係」で人を動かす

ちなみに、ケンカといっても、もちろん本当に殴り合いのケンカをするわけではありません。私は口が悪いけれども、相手を罵倒するだけでは物事が動かないことくらいわかっています。政治家を使うとか、県を飛び越えて中央省庁に直談判するとか、さまざまな駆け引きが必要です。そのあたりはジャンケンポンと同じです。つまり、グーチョキパーの関係です。

写真=iStock.com/SasinParaksa
※写真はイメージです

官僚は政治家に嫌われると出世できませんから、国会議員や地方議員にはゴマをする。そして、政治家は選挙で選ばれているわけですから、有権者には弱い。有権者は「お前、次の選挙で落とすぞ」と言えるから、政治家に勝てるのです。

しかし、官僚は選挙で選ばれたわけではないから有権者、国民に対して「黙って言うことを聞け」といった大きな態度でくる。グーチョキパーの力関係のトライアングルです。ですから、中央省庁が無理難題を言ってきたときは、政治力が生きてくるのです。