自己肯定感を構成する「6つの感」

いま、リーダー職やマネジメント層にあるビジネスパーソンの人や、積極的にキャリアアップを目指している人たちは、世間的には「メンタルが強いタイプ」と見なされることが多いかもしれません。

一方で、キャリアアップをするごとに、部下が増えたり、数字を厳しく求められたり、専門性をより問われたりするといった、これまで感じたことのないプレッシャーを受けることもあるでしょう。一般的に、立場が上がれば上がるほどメンタルの負荷は増えていきます。

それに打ち勝つためには、先に述べた「外側の鎧」と「心のなかの視点移動」によって、自己肯定感を高めていくことが重要です。では、自己肯定感はいったいどんな要素から成り立ち、どうすれば高めていくことができるのでしょうか? わたしは、自身の心理学をはじめとする研究と、何千例ものカウンセリング経験をもとに、自己肯定感を構成する要素を、次の「6つの感」として分類しました。

① 自尊感情
② 自己受容感
③ 自己効力感
④ 自己信頼感
⑤ 自己決定感
⑥ 自己有用感

この「6つの感」を高めていくための効果的メソッドを、【前編】【後編】にわたって紹介していきましょう。

リフレーミングで「自尊感情」を高める

まず、ビジネスパーソンにとって、「① 自尊感情」はとても大切な要素です。自尊感情とは、「自分には価値がある」と思えることです。自分に価値を見出すことができると、仕事においてやりがいや働きがいが生まれてきます。

仕事でステップアップを果たしたり、新しい事業を展開したりするときには、いいことばかりではなく、必ずマイナス要素が出てくるものです。課題や目標が高いほど、大きな壁が立ちはだかります。そんなときにぜひ実践してほしいのが、「リフレーミング」というメソッドです。

これは、つい使ってしまいがちなネガティブな言葉を、意識的にポジティブな言葉へと書き換えていく方法です。言葉は潜在意識に働きかける力があるため、それによって意識的にものごとの見方を変え、そこから前向きな価値や肯定的側面を見出していくわけです。

単なる言葉の書き換えではなく、具体的な状況にも活用できます。例えば、あるビジネスパーソンの強みは営業力だとして、弱みはデジタルが苦手なことだとします。でも、デジタルが苦手という弱みにとらわれて、やりがいや働きがいを失うのはもったいないことですよね。では、どうリフレーミングするかというと、「アナログが得意」と考えるということです。

これまで以上にいろいろな人脈をつくって仕事の幅を広げ、より得意なアナログ方面に集中しながら、苦手なデジタル面はほかの人にまかせることもできます。すると、弱みだったはずの部分が、弱みに思えなくなってくるのです。そうして自分の肯定的な側面へ視点を移していくと、自分の「強み」がより明確になり、行動が的を射たものになっていきます。自分の弱みの再定義・再評価ができれば、仕事がより楽しくなり、毎日生き生きとして過ごすことができるようになるはずです。