「年配者には従う」という習慣

日本で新しい技術が育たないもう一つの要因は、長男が家督を継ぐという習慣にあります。

たとえば農村の家庭では、家や財産はだいたい長男が継ぐことになっています。そうすると父親がどんなに理不尽なことを言っても、それに従い続けなければならなくなります。

最近でこそDV(ドメスティック・バイオレンス)という形で、家庭内での暴力も処罰を受けるようになりましたが、かつての日本では父親が母親や息子に暴力を振るっても許容される文化が残っていました。

そしてそうした理不尽な行動や暴力に対して我慢を続けた代償として長男は、家業や家・土地を譲り受けることができたのです。

その結果、「年配者には従う」という習慣が出来上がります。そしてその習慣が家庭だけでなく、企業の中にも浸透していきます。

反対意見は握り潰されてしまう

そして年配の企業トップが、ITなどという訳のわからないものには手を出さず、うちの会社は今までの事業を引き続き行っていけばいい、という判断を下した場合、若い社員はそれに逆らえなくなってしまうのです。

反対をする若者がいたとしてもそれはごく少数派で、そうした反対意見はすぐに握り潰されてしまいます。

日本の企業の中で新しい産業が育ってこなかった背景には、こうした文化的な要因もあるようです。

写真=iStock.com/Bombaert
反対意見は握り潰されてしまう(※写真はイメージです)