「世襲」すべてが悪いわけではないが…

こうした中での三男・伸康氏の出馬表明である。和歌山県町村会など地元からの出馬要請があったことが決断の理由だというが、「裏金」議員の公設秘書として「政治とカネ」の問題が解決されない中での出馬、そして、「世襲」として引退する父親と同一選挙区からの出馬、と2つの意味でいう逆風が予想される。

本人もその点は自覚しているのか、5月17日の出馬会見では「世襲も含め、最後は有権者が選挙で審判を下す。そのスタートラインに立ちたい」と述べた。

〈参照記事〉
二階伸康氏が立候補表明 次期衆院選和歌山2区(紀伊民放、5月18日)

もちろん、政治家の秘書が「裏金」すべての責任を負う必要はなく、責任は限定的であり、「世襲」の議員がすべて問題だというわけでもない。しかし、「政治とカネ」の当事者であり、その説明責任も果たさない中での、議席の世襲には多くの批判もある。

議席は私的に継承できるものではない

また、伸康氏は出馬会見で、「世襲も含めて有権者に判断してもらう」と述べるとともに、父の二階氏が病院に入院中であることを明かした。通例であれば、政治家の入院の公表は好ましくないものとされる。政治家として十分にその責務を果たし得ないということを有権者に示すことになるからだ。

〈参照記事〉
自民・二階俊博氏が入院 「風邪こじらせた」三男・伸康氏が説明(産経新聞、5月18日)

ところが今回の場合には、二階氏の入院を公表することによって、「議席の世襲」を正当化するという事由となると考えられる。つまり、二階氏が今後、議員として活動することに不安があるので、息子である信康氏が出馬するのは当然だ、というロジックになるということだろう。

ここで、この議席は「国民の税金によって成り立っており、私的に継承できるものではない」ということを、まず、頭に入れておく必要がある。今後、6月の和歌山の県連大会での自民党の動向が注目される。岸田首相は、果たして誰を「自民党公認」とするのだろうか。

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