過去最低の売上となった「Wii U」

遡ること2006年。同年に任天堂が販売した「Wii」は、従来のコントローラーではなく「リモコン」を用いて「リビングの娯楽」を突き詰めたことで、最終的に1億台を超えるほど成功していた。さらに2004年に発売していた「ニンテンドーDS」も同様に大ヒットしていたこともあり、当時の任天堂は、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで躍進していた。

ところが2012年、「Wii」の後継機種となる「Wii U」を発売したところ、Wiiの成功とは裏腹に売上が伸び悩んだ。Wii Uは最終的に1356万台と、Wiiの約13%しか売れず、任天堂ハードとして過去最低の売上に留まってしまった。

Wii U(写真=Takimata/CC-BY-SA-3.0/Wikimedia Commons

WiiUは、コントローラーとディスプレイが一体化した「Wii U GamePad」を用いることで、Wiiから続く「みんな」と遊ぶ方向性と「ひとり」で遊ぶ方向性を両立することを志向したハードだ。

しかし、このコンセプトが今一つ伝わらなかったと当時の社長、岩田聡は株主総会で語っている。このWii Uの不振により任天堂はかなりの間、経営的な困難に直面する。2014年までには営業赤字が3期続き、マスコミからは任天堂そのものが危ういのではという報道もされた。Switchはこうした逆境の中で発表されたものであり、期待がそこまで大きくなかったのは自然なことだろう。

しかしそんな暗雲漂う憶測とは裏腹に、2017年3月に発売されたSwitchは即座に売り切れ、購入しようにも予約すらままならないというロケットスタートに成功した。

Switchの「勢い」を支えたゲームソフトたち

少なくとも直前の実績を鑑みれば、Nintendo Switchに寄せられる期待はそう大きいものではなかった。にもかかわらず、Switchは発売まもなく完売が続く大盛況となる。一体何があったのか。

それはSwitchそのものの革新性に加え、Switchで遊べるゲームソフトの魅力的なラインナップが作り出す「勢い」にあった。

例えばSwitchが発売された2017年3月3日には、任天堂オリジナルのタイトルとして『1-2-Switch』と『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』が発売している。特に後者は「ゼルダ」シリーズとして、あるいはオープンワールドゲームとして非常に素晴らしい内容だったことから世界各地で評価され、その年の様々なゲームアワードに輝いた実績を持つ。

さらに翌月4月には『マリオカート8 デラックス』が発売。こちらは人気シリーズをブラッシュアップした内容によって長期にわたって支持され、販売本数は6000万本を超えるなどSwitchで最も売れたタイトルに育つ。更に7月には『スプラトゥーン2』、10月には『スーパーマリオ オデッセイ』など、いずれも販売実績が1000万本を超えるキラータイトルが、発売して1年も経たぬ間に4本もリリースされたのだ。