パチンコ台の許認可団体は警察の天下り先

100万円相当の賞品分、同130万円相当という表現は、まさにパチスロの賞品が換金されていること、換金して金銭を獲得することが目的で行われていることを自ら認めている記述だと言ってよい。業界が、自ら換金されていることを暗に認めているのに、いったいどうして警察が「パチンコで換金が行われているなど、まったく存じあげないこと」などという認識を持ったり、発言をしたりするのであろうか。

パチンコの機械に課される基準は数年ごとに改定され、その基準に合った機械しか店舗に設置することができない。その機械を許可するのが、「一般社団法人保安通信協会(保通協)」である。以前、許認可団体が一団体のみというのは好ましくないということで別団体が組織されようとしたが、組織形態に問題があって認可されなかった。

その後、追加で一団体が組織されたようにも聞くが、いずれにしても保通協がほぼ独占的に、パチンコとパチスロの認可を行っていることには変わりない。この団体には警察庁の幹部が天下っている。

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関連団体の要職は警察官僚OBで占められている

最も有名なのは、警察庁長官を務めた山本鎮彦で、2005年まで17年間にわたって理事長を務めた。山本が辞職した年の7月の保通協の理事は15人いた。そのうち有給は常勤の4人で、いずれも警察の元キャリアであり、吉野準会長は警視総監、都甲洋史専務理事は警察庁情報通信局長、柳澤昊常務理事は福岡県警本部長、北村隆則常務理事は東京都警察通信部長であった(溝口敦『パチンコ「30兆円の闇」』小学館、2005年、156~158頁参照)。

パチンコ関連団体の実質的な要職は、エリート警察官僚のOBによって占められ、保通協だけでなく、パチンコ機械メーカーの団体である日本遊技機工業組合(日工組)、パチンコのホール業者で構成する全日本遊技事業協同組合連合会(全日遊連)、パチスロ(回胴式遊技機)機械メーカーの団体である日本電動式遊技機工業協同組合(日電協)、さらにホール、パチンコ機械メーカー、景品問屋、上述した日遊協などの団体の歴代専務理事と事務局長のほとんどは、警察のOBが担っている。

これらの団体の専務理事を除く理事は、パチンコ機械メーカーの社長、パチンコホールの社長、パチンコ等関連企業の経営者たちだが、ほとんどが非常勤の理事に留まっている。

警察が「パチンコで換金が行われているなど、まったく存じあげないこと」と公言するのであれば、これらの団体に天下ることは何ら問題のないこととして、大手を振って正々堂々と行えばいいと考えられる。しかし、定年退職後にこれらの職場に勤務するにあたっても、あるいはこれらの職場を実質的に紹介されて再就職するにあたっても、公表を躊躇するような雰囲気がうかがわれなくはない。