とくにひどいのが、根拠は何もないにもかかわらず、トランプが敗北した大統領選に不正があったと暴徒をそそのかし連邦議会に攻め込ませ、数人の死者を出した事件だ。トランプは、この事件で有罪になった人々を恩赦するとして選挙を戦っている。

しかし、ただの悪ガキでないのが大きな問題だ。昔は今にもまして美貌だったし、彼には人を惹きつける独特の魅力、魔力がある。そして、男性社会、白人至上主義への回帰を求める基盤が確実にあるのだ。

アメリカには男性支配、白人支配への回帰を求める根強い基盤があり、トランプの政治スタイルを歓迎する人も少なくない。

トランプは自身の無法に対して共和党の誰もが何も言えない状態をつくり上げた。マイク・ジョンソン下院議長はトランプの住むフロリダ州マール・ア・ラーゴに日参して指示をあおぐ有り様である。

トランプは、独裁者プーチンと関係が深く、トルコ、ハンガリー、ブラジルの独裁者とも近い。再選されると世界全体の独裁者の輪が広がり、アメリカだけでなく世界の民主主義が破壊されるのではないかと空恐ろしくなる。

バイデンの支持率が上がらない理由

バイデン現大統領は、新型コロナウイルスの存在をほぼ無視していたトランプ前大統領とは違い、疫病に立ち向かい一応の成果を上げた。コロナ禍のロックダウンや消費の減少で失職したり収入が減ったりして困窮する人が増えた。それを救おうとしたバイデンのインフラ等に投資する大型経済政策は正しい方向だったと思う。

バイデンは財政政策による1.2兆ドルにものぼるインフラ投資法を成立させた。しかし、大盤振る舞いが過ぎたのかもしれない。この政策により雇用は増加し、株価も高騰したが、同時に約9%ものインフレに襲われることとなった。

今インフレ率は沈静には向かっている。しかし、国民は物価上昇を懸念している。食料などの日常的支出がコロナ前に比べ高いため、経済状態への国民の評価は必ずしもポジティブではないのだ。したがって、バイデンに投票しようとする動きが加速しているとは言えない。

バイデンの支持率に影響を与える要素はほかにもある。昨年10月7日にハマスの奇襲で始まったイスラエルとパレスティナの紛争だ。経済支援を行うイスラエルの過剰な反撃がパレスティナを無視しているとして、バイデンから若者の支持が離れる恐れがある。

共和党の政治的動きで、アメリカ南部の国境問題・移民問題が過熱しており、バイデン政権の失敗であるという印象も生まれている。バイデンは、明確なビジョンを示せなければ、支持を失う可能性があるのだ。