譲渡できない犬・猫が溢れかえる

自治体によっては、1回でも「犬が歯をむき出して唸った」「猫がシャーッと威嚇した」だけで、「人や他の動物に危害を及ぼす恐れが高い動物」と判断され、①に分類されることもあると聞いています。

沖縄県ではその①の部分も含め、全体的な殺処分を減少させるため、保護した犬や猫の譲渡を推進する「県動物愛護管理センター譲渡推進棟(愛称:ハピアニおきなわ)」を2022年に開設しました。この施設では人に慣れていない保護した犬や猫の譲渡適性を向上させるため、しつけなどのトレーニングや健康管理を行っています。

殺処分が過去最少となった背景には、動物愛護団体の活躍とともに、県の積極的な譲渡活動の成果があったわけです。

しかし、野犬や野良猫などの保護が多い地域でこのような施設を備えないまま無理に「殺処分ゼロ」を推し進めると、動物愛護団体の収容能力が限界に達し、自治体の施設が譲渡できない犬や猫で溢れかえることになります。そうなれば、犬や猫の動物福祉を低下させることになります。

持続的な過密環境ではストレスでトラブルも多くなり、犬同士の攻撃による死亡事故が生じたケースも報告されています。単に「殺処分ゼロ」を目指せばよいということではないのです。

「引き取り屋」が動物愛護団体に鞍替え

そして更なるからくりは、行政の「引き取り拒否」が可能になったことです。2013年に施行された改正動物愛護管理法では、自治体が業者から犬や猫の引き取りを求められても、相当の理由がなければ拒否できるようになりました。

その結果、自治体の引き取り数は減少しましたが、引き取りを拒否された犬や猫の受け皿のひとつとして、有料で犬や猫を引き取り劣悪な環境で飼育する「引き取り屋」が横行する事態となりました。

さらに、2021年に施行された改正動物愛護管理法の数値規制導入の結果、ペットショップやブリーダーから相当数の犬や猫が溢れることになり、それらの関係者が動物愛護団体を設立したり、前述の「引き取り屋」が動物愛護団体に姿を変えて、利益目的の保護活動をしているとの報告もあります。

有料で犬や猫を引き取り、譲渡条件に諸費用、ペット保険の契約、遺伝子検査代、フード代(複数年契約)などを付加し、新しい飼い主が1匹を保護するのに初期費用として15万~20万円を請求する団体もあるようです。

写真=iStock.com/Felbaba Volodymyr
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