「自分ひとり」の食事代やコーヒー代は経費にならない

「業務時間中の外食や買ってきたお弁当は、家にいれば発生しなかったのだから経費になる」という考え方もあります。確かに、社員の食事補助や、あるいは食事に連れて行くための食事代は福利厚生費として経費にできますし、取引先などと行けば、接待交際費、議事を行うなら会議費にできます。

しかし、フリーランスなどの個人事業主や、法人でも社長が自分ひとりで食事したものは、基本的に経費には該当しません。また、喫茶店を作業スペースにしたときの飲食代が経費になるかどうかは、極めてグレーゾーンです。

例えば、自宅にインターネット回線がない、仕事ができるようなスペースがないから喫茶店で仕事をしている。あるいは、外出先で仕事をする必要があったなど、妥当性があれば経費にできる可能性があります。税務調査で否認されないよう、「喫茶店で仕事する致し方ない事情」を、根拠をもって説明できるようにしておいてください。

「経費でない」と否認されれば、そのお金は役員賞与として扱われ、源泉徴収の対象になりかねません。

切手や印紙、事務用品は「買っただけ」では経費にならない

「決算前に商品券をたくさん買えば経費算入できるのか?」

これもよくクライアントから相談を受ける節税対策ですが、残念ながら経費にできません。商品券のほか、回数券やプリペイドカードも同様です。取引先への贈答なら接待交際費、社員に渡すなら給与ですが、自社で保有するなら、それは単なる現金の代わりに過ぎず、支出の手段でしかありません。

また、事務用品、作業用の消耗品、郵便切手、収入印紙なども「買っただけ」では経費になりません。これらは、「消費してはじめて経費になる」ということを覚えておいてください。

ただし、事務用品と消耗品については、以下の3つを押さえていれば購入したぶんをそのまま経費にできます。

❶毎年おおむね一定数量を購入する

❷毎年、経常的に消費するものである

❸この処理方法を継続して適用する

つまり、日常的に使わない消耗品や、年度によって買ったり買わなかったりする事務用品については、未使用の在庫量を洗い出して経費から除外する必要があるのです。

誤った経費の考え方は、税務調査の前に正そう

冒頭でもお伝えしたように、いまは税務署も人不足であり、税務調査が定期的に必ず入るとはいえない状況になっています。

その反面、業務効率化のために調査のAI化や、電子帳簿保存法の進化によって、直接、法人の事業所に立ち入らなくてもデータ上で税務調査が行われるような時代が訪れる可能性はあります。そうなれば、毎年すべての事業所の怪しい経理が細かくチェックされることは、想像に難くないでしょう。

税法自体にグレーゾーンが多く、解釈を間違える幅があることは事実ですが、正しい経費の認識をもって、都合のいい声に振り回されないようにすることが大切だと思います。

連載第1回目は、「経費にできないもの」に焦点をあてましたが、次回は「経費にできるもの」に焦点をあて、家事按分や減価償却を中心に解説していきます。

(構成=岩川悟、吉田大悟)
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