これ以上スピードを上げて移動する必要性があるのか
確かに名古屋周辺の企業にとっては品川まで1時間かからずに行けるリニアは便利だろう。だが、新型コロナ以降、働き方が大きく変わる中で、東京に駆けつけなければならない仕事は減っている。オンライン会議で事足りるケースが増えているからだ。東海道新幹線のグリーン車は新型コロナ以降、めっきり大企業のビジネスマンらしき姿が減った。
20世紀はより速く移動することが大きな利益をもたらす時代だった。新幹線網もそうした時代の流れの中で整備されてきた。だが、もしかするとこれからの時代はスピード第一ではないのかもしれない。だからこそ、国民の間に何が何でもリニアを建設しようという熱が高まらないのではないか。これ以上スピードを上げて移動する必要性を果たしてどれだけの日本人が感じているか、である。
そんな冷めた国民のムードを感じれば、新しい静岡県知事も、県民に犠牲を強いてまでリニアを早期着工させようとはしないだろう。また、着工しても難工事が予想される南アルプストンネルは、予定通りに完成するかどうか怪しい。結局、2040年近くになってもリニアは完成していないかもしれない。その頃、リニア技術は陳腐化しているかもしれないし、人が高速で移動する必要性が今以上に落ちている可能性すらある。