不満はあるが文句も言わない「政治への諦念」

ぼくがよく引き合いに出すのが、内閣府がずっと実施している「社会意識に対する世論調査」です。この中に「国の政策に民意が反映されていると思うか」。つまり、自分の1票が政策に反映されていると思うかを問う設問があります。これが、一貫して「ノー」なのです。

昭和の時代から現在に至るまで、とにかく低い。政権はほとんど関係ありません。この結果を解釈すると、多くの人たちは、「われわれの国の政策に、民意は反映されていないと認識している」ということです。

だからなにもしない。投票率も低いけど、かといって打ち壊しもしない。ある意味とてもフシギな社会ですが、よくも悪くもそういう社会になっています。

いってみれば政治に対する「諦念」、諦めの気持ちみたいなものに覆われているのだと思います。「政治的有効性感覚」といいますが、自分の1票が政治を変えることはないと思っている。そうすると投票率が低いとしても「合理的」に見えてきます。

「そこそこの暮らし」に満足してしまっている

その一方で、「社会に対して満足か否か」を問う調査では、「満足している」という回答が、「満足していない」という回答を2016年以降、ずっと上回っています。不満ですらない。

西田亮介『明日の自信になる教養2 池上 彰 責任編集 幸せに生きるための政治』(KADOKAWA)

たとえ政権が腐敗していても、毎日そこそこの暮らしができればいい。政治に興味を持たなくても、ある程度みんなが幸せに暮らせていることの証左でしょう。

では、投票率が高くなるのはどんなときかというと、小泉純一郎元首相の郵政選挙のとき。もう1回は、民主党への政権交代のときです。郵政選挙は小泉氏という特異な人による劇場選挙みたいなものであまり気にしなくていいと思いますが、本当に政権交代が起きうると多くの人が思う本格政党が出て来れば、われわれも期待して投票に行くことは明らかです。

でも、立憲民主党などの野党も、結局、共闘するのしないのと本気で政権を取りに行く気がなさそうですよね。その間隙を縫うように日本維新の会や左右の極端な意見を主張する新興政党が出て来たというのが今の政界の状況ではないでしょうか。

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