トヨタの「自主研」を不正が起きた認証工程に導入する

【豊田】今の世の中、不寛容になっていると思います。報道も責任追及と犯人探しに終始する。しかし、本当に大切なのは何が起こっていたのかを知って、真実を明らかにすること。そして、それを世間に正しく理解をしてもらうこと。私はこれからもしっかり説明していきます。

組織の長というのは結果責任です。今回不正が起きた3社の認証工程にTPS(トヨタ生産方式)をしっかりと導入して、自主研(自主研究会)をやります。どのような仕事の工程になっているのかを明らかにして、異常が見える、改善が継続できる職場に変えていきたいです。

トヨタ本体の自主研であればわたしは何度か見たことがある。問題を探し出し、細かいところまで調べてカイゼンを継続的に行う。そして、それを発表する。日ごろの仕事を見直す機会だ。そして、つねに異常が見える職場にすることで、閉鎖的だった職場がオープンになる。

そうすれば不正、不祥事は起きにくくなるし、隠しておくことができなくなる。自主研は生産現場を中心にグループでも日頃からやっている活動だが、今回は不正が起きた認証工程に導入しようというものだ。

私は「トヨタのディスポーザー」

さて、彼はトヨタ自動車会長であると同時に、自動車産業全体を守る日本自動車工業会の会長でもあった。約5年の任期中にEVブームが到来しても、「敵は炭素であり、ガソリン車ではない」と言い続けてきた。自動車産業で働く550万人の雇用を守るためである。

例えば、EVのための電気を作るには発電しなければならない。現在の日本は火力発電がほとんどだ。バッテリーEVで使う分の電気を火力発電で作れば、そこからCO2が出る。自工会会長としてそのことをずっと伝え続けてきたことで、世の中にも少しずつ理解されてきてはいる。

【豊田】私はずっと叩かれている。私の人生そのものですね。これまで孤軍奮闘でやってきても、結果は関係なく叩かれる。

私は自分のことをディスポーザーだと思っています。処理役。トヨタグループおよびトヨタ自動車のディスポーザー。何か事が起こると処理をする役です。ただ、ディスポーザーが役割を果たしたら、きれいな水になる。完全にきれいでなくても、害のない水にはしたい。処理をしたからといって、すべてきれいに解決する訳でもないです。

それでも私のようなディスポーザーがいることで、一歩一歩でも未来につなげていきたいという想いです。

撮影=プレジデントオンライン編集部
自らを「トヨタのディスポーザー」と表現する豊田会長。自分のような存在がいることで「一歩一歩でも未来につなげていきたい」と語る

経営者だからと偉そうに、かっこつけても仕方がない。叩くのはいつも、会ったことのない人だ。そして、そんな人に限って、一度会ったら次はとてもにこやかに接してくる。会った人は変わる。そういうものではないか。

「僕のことより、学園のみんなのこと、ちゃんと書いてください」

そして、彼はまたこう言った。

「納得してから、ですよ」

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