街のどこを見ても留学や海外就労のポスターがずらり

ネパールを訪れるのは実に20年ぶりのことだ。空港を出ると、タクシーはすぐに大渋滞に吞み込まれた。あのころとは比べものにならないほど交通量が増えているようだ。排気ガスが煙る。運転手が言った。

「クルマは関税が200%以上もかかって高いんだけど、それでも売れてる。外国で出稼ぎしてきた人たちが買ってるね。土地もそう。外国で稼いだお金で投資してる」

海外で働く動きがそれほどに広がっているのだろうか……そう思って旧市街ダルバール広場の北に広がるタメル地区に宿を取り、周辺を歩いて回ってみたところ、ある雑居ビルの前で足が止まった。その外壁は色とりどりの看板で埋め尽くされていた。

「STUDY IN USA」「AUSTRALIA VISA」「JAPAN」「UK」……どれも海外での就労や留学をあっせんする業者のようだ。こんなビルが周囲には林立していた。日本でのカレー屋のコックに限らず、国外での出稼ぎが国の主要産業になっていることを実感する。こうした業者はカトマンズだけでなく、ガンダキ州都にして観光都市ポカラに移動してもやはり目立つ。海外へ誘う看板やポスターを実によく見る。

現地ではインドカレーは“外食”扱い

この街からは中部ヒマラヤの絶景が見渡せて、トレッキングの拠点ともなっているのだが、観光業よりも国を出ることを選ぶ人々が多いのだろうか。旅行者が集まっているのはペワ湖という湖の周辺だ。その東岸は「レイクサイド」と呼ばれ、ホテルやレストランや土産物屋やトレッキング用品店などが立ち並び、なかなかに賑やかだ。

そして20年前と変わっていたのは、ネパール人やインド人の観光客が「主力」となっていることだろうか。昔は外国人バックパッカーやトレッカーがもっとハバを利かせていたように思う。

チベットの仏具や雑貨を商う店のおじさんに聞いてみると、「コロナ禍で外国人が入国できない時期があったからね。そのぶんネパール人がよく来てくれたよ」なんて答えてくれた。ネパールでも経済力を持つようになった、いわゆる中間層が増えているようだ。その「原資」は、国外での出稼ぎなのかもしれない。

彼らがそぞろ歩くレイクサイドでときどき見かけるのは、インドカレーの店だ。メニューを見ればおなじみバターチキンカレーやチーズナンといった日本の「インネパ」でも定番のラインナップが並んでいて、つい入ってしまう。バターチキンカレーを頼んでみたところ、日本で食べるものよりも少し濃厚な味わいだったが、なかなかおいしい。これがインドやネパールでは「外食」として好まれているのだろう。

写真=iStock.com/Soumen Hazra
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