多様性が必要な日本企業

前出の大滝氏も日本企業が外国人を雇う際、昇進と評価は1つの重要なポイントと指摘する。

「外国人はキャリアのゴールを常にイメージしている。彼らが昇進に求めるスピード感はかなり速い。50歳になって部長の声が聞こえてくる日本企業とは異なります。企業が優秀な外国人を自社に留まらせたいならば、透明性が高く論理的な制度で評価し、それをきちんとフィードバックする必要があります」

大滝氏は日本企業の立場は年々悪くなっている、という。

「日本企業の立場は年々低くなっています。この15年でグローバルビジネスのシェアは日本企業全体で24%少なくなり、それがBRICsに移っている、というレポートがある。世界で日本が1人負けしている状況では、優秀な外国人は日本企業に入りたいとは思わないでしょう。

日本企業が勝てない理由の1つは、日本が得意としてきたビジネスモデルが通用しなくなっていることです。今、求められているのは、日本がやってきた輸出型のビジネスモデルではなく、現地のニーズを拾い、市場に深く入り込んだビジネスです。

そこで求められるのは多様性。現地の深いニーズを拾うためには、外国人を採用し、多様な文化を企業内に蓄積しなければなりません。日本企業は今こそ外国人採用に力を入れるべきです」

アンケート結果の出身国別採用数を見て大滝氏は続ける。

「市場規模が小さい韓国の人が多いのは、日本語が堪能な人が多いせいかもしれませんが、日本語がうまいという理由で採用するのはやめるべきです。市場が拡大するアフリカの人を採用するなど、戦略的に行う時期にきています。

日本企業では、武田薬品工業などが先進的な採用活動をしています。彼らは日本語能力にかかわらず、アジアの著名なビジネススクールを回って、ポテンシャルの高い外国人を採用しています」

課題山積の日本企業だが、世界に通用する魅力はないのだろうか。前出のMさんはいう。

「丁寧さ、そして約束を守るところ。環状線である山手線を時間通りに運行させるのは、日本人でないとできないでしょう」

大滝氏は日本企業のよさをきちんと見せることが大切という。

「日本企業の技術やサービスの質の高さ、日本人の生真面目さは世界に誇れる長所です。日本企業に入る外国人に、あなたの選択は間違っていなかったといえるよう、企業も努力していくことが重要です」

※すべて雑誌掲載当時

(宇佐見利明=撮影)
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