じゃんけんを仕掛けるときは「最初はグー」を
2009年に日本経済新聞に掲載された、桜美林大学の芳沢光雄教授による「ジャンケンに関する研究結果」によると、学生725人による、延べ1万1567回のジャンケンの結果、それぞれ出された手の回数は以下のようになりました。
グー:4054回
チョキ:3664回
パー:3849回
これをパーセンテージにすると、
「グー」を出す確率:4054/11567=35.0%
「チョキ」を出す確率:3664/11567=31.7%
「パー」を出す確率:3849/11567=33.3%
グーを出す人が一番多く、次にパー、チョキの順です。自分がグーを出したときに勝てるのは、相手がチョキを出したときですので、勝つ確率は31.7%です。
同様に、
自分が「チョキ」を出して勝つ確率:33.3%
自分が「パー」を出して勝つ確率:35.0%
となります。
つまり、「パーを出すのが最も勝ちやすい選択」ということです(図表1)。
この勝率の差は「誤差の範囲」ではないかと思うかもしれませんが、統計的に意味のある差であることがわかっています(これを「有意差」といいます)。
心理学的には「人間は警戒心を持つと、拳を握る傾向がある」という説のほか、「チョキはグーやパーと比べて出しにくい」という説もあります。
クセというのは、人が無意識時により出やすいので、相手が酔っ払っているときや疲れているときはチャンスかもしれません。
また、こちらからじゃんけんを仕掛けるときは「最初はグー」という掛け声をスピードアップし、相手に考える余裕を与えないようにすることで、クセがより出やすいのではないでしょうか(図表2)。
あいこになったとき、次も同じ手を出す確率は22.8%
これが、じゃんけん初手(最初になんの手を出すか)での戦略です。
この研究では、「あいこになったときは、次になんの手を出せばいいのか?」についても調べています。その結果、あいこになったとき、次も同じ手を出す確率は22.8%ということがわかりました。
例えば、自分が一度目に「グー」を出し、相手も「グー」を出しあいこになったとします。すると、次に相手がまた「グー」を出してくる確率は22.8%だということです。
もしランダムで「グー・チョキ・パー」を出しているなら、それぞれの確率は1/3(約33%)になるはずですので、22.8%というのはかなり低いことがわかります。
「なんとなく、同じ手ではなく違う手を出したくなる」という選択のクセがあるようです。
統計数理研究所の石黒真木夫名誉教授が作った「じゃんけんゲーム」では、人間対コンピューターで先に30点を取ったほうが勝ちという勝負で、延べ5万回の勝負でコンピューターの勝率が6割を超えました。
というのも、このソフトでは人間の14のクセを織り込んで勝負をしながらパターン解析を行い、人間の出す手を決定していくそうです。
「人間がソフトの手を読もうとすると、それがクセになるので、逆にソフトの勝率が上がる。まったくデタラメに出せれば、それが一番強い(勝率50%にすることができる)」という石黒教授のコメントも紹介されています。