光源氏のようなセレブは受領の妻や娘を好き放題できたのか

そこに、紀伊守の父・伊予介の後妻である空蟬も滞在していたのです。伊予介は単身で任国に赴任していたのでした。この空蟬が、伊予介の娘ほどの年齢の若妻で、落ちぶれ貴族ということで興味を持っていた源氏は、その寝所に侵入。

小柄な彼女を抱き上げて、奥にある自分の寝室に連れて行ってしまいます。

それを女房も目撃しながら、「並々の身分の人なら、荒々しく引き離すこともできるが、それすらたくさんの人に知られてしまうので、いかがなものか」ということで、女房はなすすべもありません。そんな女房に源氏は、

「明け方にお迎えに参れ」(暁に御迎へにものせよ)(「帚木ははきぎ」巻)

と、どこまでも上から目線。

空蟬に対しては、情愛深く口説き文句を並べるものの、空蟬は、

「私は“数ならぬ身”(数にも入らぬ身の程)とはいえ、こう人を見下したやり方では、お気持ちの程も、なんで軽く思わずにいられましょう」と、強硬に拒みます。果ては泣きだしてしまうのですが、源氏は、将来などを約束し、ありったけのことばで慰めて、ついには関係してしまいます。

これってレイプではないですか?

その後、源氏は空蟬の弟を使いとして、再び会おうとします。けれど、空蟬は二度と受け入れない。あげく、源氏は、忍び込んだ先にいた空蟬の継子の軒端荻のきばのおぎを、人違いと知りながら犯してしまいます(空蟬は一足先に逃げ出していた)。

人妻だろうが、伊予介の愛娘であろうが、お構いなし。

空蟬と継子・軒端荻の様子をのぞき見する光源氏[土佐光吉「源氏物語絵色紙帖 空蝉」/桃山時代(17世紀)、京都国立博物館蔵(出典=国立文化財機構所蔵品統合検索システム)]

若い娘を「いつでもヤレる女」と侮った光源氏の思い上がり

それどころか、

「この女(軒端荻)は、結婚しても、変わらず打ち解けてくれそうに見えたな」(主強くなるとも、変らずうちとけぬべく見えしさま)(「夕顔」巻)

つまりは「いつでもヤレる女」と侮り、放置してしまう。

そして彼女の結婚後は、「処女じゃなかったことを知って、夫はどう思っているだろう」と、夫の気持ちを思うと気の毒でもあり、また軒端荻の様子も知りたくて文をやりながら、「まぁ夫もこの文を見つけたとしても、相手は私だったのだと思い合わせれば、ゆるしてくれるだろう」

などと思っている。

それを作者の紫式部は、

「そんな“御心おごり”(思い上がり)は、あまりのことであった」

とコメントしています。

大貴族はやりたい放題です。