オールドエコノミー産業として代表的な建設業界も、海外進出はそれほどはかどっていない。業界の雄、鹿島でも17%どまり、完成前から東京の新しい観光名所となっている東京スカイツリーの建造を手がける大林組は15%、大手5社の一角を占める大成建設は13%である。
金融に目を転じてみよう。現下の大震災で多額の保険金支払いが見込まれる保険業界。損保大手の東京海上ホールディングスは中国の生命人寿保険に出資するなど国際戦略も進めているが、海外売上比率はまだ17%ほど。再編で業界首位に躍り出たMS&ADホールディングスは13%とさらに出遅れている。証券では業界2位の大和証券グループ本社が10%と、リーマンの北米以外の事業を買収したライバルの野村ホールディングスに大きく水をあけられてしまった。
流通では、積極的な外国人採用を標榜しているファーストリテイリングでさえ、海外の比率は17%である。同様に海外でのブランド評価が高い良品計画も11%だ。大震災でひときわ存在感を放っていた、コンビニチェーンのファミリーマートは、ベトナムなどアジア各国への積極的な展開を進めているが、それでも海外比率は15%である。
図の下段が、「海外開拓型」企業と「ドメスティック型」企業の比較表だ。まず目を引くのが従業員数。連結、単体ともに海外開拓型がドメスティック型を大きく上回る。多数の社員を食わせていくためには否応なしに海外に出ていく必要があるということなのだろうか。あるいは、体力のある会社でないと海外で戦えず、おのずと大企業が増えるのかもしれない。
実際、一番重要なのは企業の「稼ぐ力」。その一指標たる連結ROEでは、いずれもマイナスという寂しい結果ではあるものの、やはりドメスティック型のほうが分が悪い。
従業員の待遇という面でも海外開拓型が有利だ。平均年収では608万円と、570万円のドメスティック型を約7%上回っている。奇しくも平均年齢は39.6歳と同じであった。平均年収に相関する生涯賃金で比べても、海外開拓型が2億2922万円と、ドメスティック型より1500万円ほど多い。大卒初任給もわずかながら海外開拓型が上回る。これからの時代、この差は拡大していくばかりだろう。サラリーマンがよりよい生活を目指すためには、やはり英語などで武装して、自らを「海外開拓型」人材につくり変えていく必要があるのだ。
※すべて雑誌掲載当時