人口減少が著しく、乗り換え需要も少ない

静岡駅にのぞみが停まらないのは、静岡駅の市場規模がもっとも大きな理由である。

2020(令和2)年度の国勢調査の数値を見ると、静岡市の人口は69万3389人。これは全政令指定都市のなかでもっとも低く、人口の増減率を見ると、2005(平成17)年時点で、人口が減少傾向に入っているのは静岡市と北九州市のみ。直近ちょっきんの2015(平成27)年と2020年の人口の対比でも新潟市、北九州市に次いで、3番目に減少率が高くなっている。

政令指定都市の過去20年の人口推移(出所=『鉄道会社vs地方自治体 データが突き付ける存続限界』)

そして、静岡駅の後背地こうはいち市場が小さいこともその理由である。後背地とは駅周辺の市場、静岡市の周辺都市を指すが、先ほどの乗車人員の一覧にあるように、静岡駅の在来線利用者数は他の駅に比べてかなり少なく、これは静岡駅周辺からの乗り換え需要が少ないことを示している。

さらに、他の主要駅ではJR路線のみならず、大手私鉄や地下鉄がある駅も多いが、静岡駅では静岡鉄道のみで、しかも駅は少し離れた場所にある新静岡駅である。在来線・他社線からの乗り換え需要が大きくないことが静岡駅周辺の市場規模の限界を示しており、のぞみの停車で需要を掘り起こす必要もないと考えられている。

東海道新幹線の他駅と比べて規模が小さい

次に考えられる理由は、東海道新幹線の特殊性である。

静岡市は政令指定都市であり、人口が減少傾向にあるとはいえ、都市規模は全列車停車駅の岡山駅がある岡山市とさほど変わらない。しかし、静岡市を東京23区、横浜市、名古屋市、京都市、大阪市と比べると、その規模は格段に異なる。

岡山駅がある山陽新幹線の場合、福岡市は大きな都市だが、岡山市と比べた場合、その差は東名阪と静岡市の差ほど大きなものではない。つまり大阪と福岡の速達需要は山陽新幹線では大きな比重を占めるものの、東海道新幹線における東名阪の速達ニーズほど大きなものではないため、途中の岡山駅や広島駅の需要の比重も相対的に大きくなる。

もっといえば、これらの需要だけでも不十分なので、のぞみやみずほには、姫路、福山、徳山、新山口に停車する列車が設定され、よりきめ細かく需要を拾う施策をとっている。他の新幹線を見ると、さまざまな都市のニーズを拾う傾向がさらに顕著けんちょに見られるほか、上越新幹線では、越後湯沢駅までの区間列車が「たにがわ」、新潟駅までの「とき」、東北新幹線では、区間列車の「なすの」、盛岡までの「やまびこ」、新青森や(北海道新幹線の)新函館北斗までの「はやぶさ」と、停車駅と運行区間双方で名前が分けられている。

山陽新幹線や九州新幹線こそ、やや東海道新幹線に近い運行パターンではあるが、東海道新幹線は東名阪という、他の新幹線にはない巨大な市場を持つゆえに、その三大都市の速達需要、つまり、のぞみの運行が最優先にされ、その結果、のぞみは静岡駅を通過してしまうというわけだ。