これからは桁違いに予算が伸びていく
実際、令和5年度の予算に関しては、令和4(2022)年12月に決定された新たな国家安全保障戦略を踏まえた「海上保安能力強化に関する方針」に基づき、過去最大の金額及び増額(前年度予算より200億円増)となり、メディア等でも注目されました。
近年の海上保安庁の予算は毎年数パーセント程度の伸び率(20~30億円)で増額し続けてきましたが、令和5年度は実に10%近い伸び率です。しかも、今後も増額される予定であり、令和9(2027)年度当初予算を令和4年度水準の2231億円からおおむね1000億円程度増額することが決まっています。つまり、年平均では200億円の増額となり、これまでとはまさに桁違いに予算が伸びていくというわけです。
現時点では、世界第6位の広さのEEZの海洋権益を守っていくには、予算・勢力ともにまだ十分とは言えないのが正直なところですが、今後はそれにふさわしい規模の組織に成長していくことが期待できます。
有事の際は日本国民の人命を保護する役割
海上保安庁は、海上の安全と治安の確保を図ることを任務とする法執行機関です。密輸や密漁等の海上犯罪の取締りのほか、領海警備や海難救助、海洋環境の保全、航行管制等の船舶交通の安全確保、海洋調査など幅広い業務を行っています。
また、有事(日本に対する武力攻撃等で防衛出動や治安出動が発令されるような事態)の際に、内閣総理大臣が特別の必要があると認める場合には、防衛大臣の統制下に入り、住民の避難・救援といった国民保護措置や、海上における人命の保護等の役割を果たすことになっています。
尖閣をはじめとする近年の安全保障環境の厳しさを背景に政府内部、政権内における海上保安庁の役割や評価は、以前とは比べものにならないほど高まりました。
前述の予算の大幅な増額からもそれは明らかですが、別の角度からその事実を端的に表す指標があります。長官が首相官邸に行く(総理に面会する)頻度です。
ご存じの通り、官邸では日本にとって重要な意思決定が行われています。つまり、重要案件に関わっている役所のみが足を運ぶ場所なのです。