現状でまったく貯蓄ができていないのだから、この分は貯金を取り崩さざるを得なくなる。

「あまり脅さないでください」

「脅すつもりはありませんが、今回の増税はやりくり費を節約するだけでは対応不能なレベルなのです。ライフスタイルを根本的に変えないと、いずれ家計が破綻してしまいますよ」

家計の見直しの基本は「大物から」。家計支出の中で一番大きいのは、ズバリ住居費だ。教育費を削りたくなかったら、これに手をつけるしかない。

賃貸に入居している人なら、家賃の安いところへ引っ越すにはいい条件が揃ってきている。年々空室率は上昇しており、エリアにこだわらなければ、相当有利に家賃交渉を進めることができる。次の数字を見てほしい。

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・賃貸住宅の空室率(2008年)
(1)福井県 30.1%
(2)山梨県 28.2%
(3)長野県 27.7%
(4)茨城県 27.5%

5年ごとに総務省統計局が調査(総務省統計局「平成20年住宅・土地統計調査」)を行っており、間もなく最新の数字が出るはずだが、関東近県でも25%近い数字が出ている。敷金・礼金ゼロ物件も増えているから、引っ越しの費用はやり方次第で相当低く抑えることが可能だろう。

買い替えは簡単ではないが、ローン破綻の増加で任意売却などの「訳あり物件」が増えているから、丹念に探せば信じられないほど安い価格の物件が見つかる場合もなくはない。

しかし、なんと言っても一番のお勧めは、実家に同居することである。私の持論は、「集まって暮らせば、固定費は下がる」。妻側の実家に同居すれば、嫁姑戦争の勃発もなく住居費はゼロ。水道光熱費も半分ぐらいに圧縮できるだろう。時代は明らかに同居、大家族だ。

「つまり、夫にマスオさんになれということですね」

「そうです。案外、実家のお母さんにチヤホヤされてうまくいくものですよ」

涼子さんがニヤリと笑った。家計を破綻から救うためなら、マスオさんもなんのそのだ。

(構成=山田清機)
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