曹洞宗・大本山總持寺祖院が再び破壊された

1月10日付宗教専門紙「中外日報」は、各教団の被害状況をまとめている。曹洞宗では石川、福井、富山、新潟の北陸4軒で全壊が10カ寺、一部損壊が51カ寺に及び、浄土宗でも35カ寺が被災したとの一報を伝えた。

だが、他の教団や神社界も含め、詳細は不明だ。すべての寺院、神社、さらに新宗教の施設を合わせれば、1000を超える被災数になる可能性がある。

これは、2011年の東日本大震災以来の惨事といえる。東日本大震災での宗教施設の被害はあまり報じられなかった。だが、東日本大震災における流失、全壊・半壊・一部損壊などの被害を受けた寺院はおよそ3200カ寺(全寺院の4.2%)にも及んでいる。また、神社では、神社本庁所属の神社のうち4385社(同4.8%)が被災している。

ちなみに太平洋戦争下における寺院の被災数4609カ寺(被災率5.9%)である。このことからも、地震などの自然災害の威力がいかに凄まじいかが見てとれる。

今回の能登半島地震で衝撃だったのは、曹洞宗の大本山總持寺祖院が破壊されたことだ。回廊が全壊し、全ての伽藍に被害が見受けられたという。

總持寺の公式ホームページでは祖院の被害状況について以下のように説明している。

「法堂(大祖堂)、山門、仏殿、経蔵、僧堂(坐禅堂)などの主要建物の倒壊は免れはしましたが、前田利家公の正室・お松の方をお祀りしておりました芳春院が全壊し、山門と香積台とをつなぐ禅悦廊(山門に向かって右手の回廊)や水屋が全壊するなど、大きな被害がありました」

回廊など国の登録有形文化財も被害に遭った。そのため、むやみに瓦礫を撤去することもできない状態という。

悔しいのは、總持寺祖院は震度6強を記録した2007(平成19)年の地震でも多くの建物が被害を受け、再建した直後だったからだ。この地震では僧堂が全壊するなど、境内にあった約30棟のほぼ全てが被災していた。境内の地盤も地滑りを起こして変形していた。

そこで、翌2008(平成20)年から保存修理事業がスタート。およそ40億円を寄付などで集めて、耐震補強工事などが施された。地滑り防止の多数の杭を打ち、地盤改良なども施していた。山門は曳家による修理が行われ、再建の様子に目が注がれていた。

撮影=鵜飼秀徳
再建した直後の2021年に總持寺祖院を撮影。今回の地震で山門から延びる回廊が倒壊したとみられる

そして、2021(令和3)年にようやく再建、落慶したところであった。それがわずか3年後に、再び被災する憂き目に遭ったのだ。関係者の失望を思うと、言葉も出ない。耐震工事の検証も必要になってくるだろう。

祖院は信仰面だけではなく能登観光の拠点でもあった。地域経済をも担った祖院の再建がどうなるかで、地域の復興にも影響を与えるであろう。