選手権の休憩中にエイを買う
予選1問目は、ご飯の上に置かれた中おち部分を、ご飯と共に食べて何の魚かを当てる問題。回答がわかった宮澤少年は、ご飯と一緒に口いっぱいに頬張り答えるも「それじゃわからない」と現場の進行役である中村有志(現・中村ゆうじ)にツッコまれる、スタジオからは「かわいい~」の歓声も飛んでいたが、見事アカマンボウを正解。
嬉しそうなのはもちろんだが、正解と言われてなんどもペコペコお辞儀をする腰の低さはこの頃から変わらない。続く2問目も正解で、「天才高校生」の出現に他の出場者もたじたじとなった。
またこんな場面も。七輪で焼いた焼魚のニオイから魚の名前を当てる問題でエイを正解した宮澤少年は、「今日買いました」と一言。「ロケのあいだに買ったの⁉」と聞かれて「家でさばきます。4匹」と答えた宮澤少年に、中村有志からは思わず「ヘンなひと!」という驚きの言葉が漏れる。
緊張感あふれる真剣勝負の最中なのに買い物をするのは余裕の表れだったのか、それだけなによりも魚に目がないことの証しだったのか。いずれにしても、宮澤少年の只者でなさがわかる場面だ。
見事決勝進出を果たした宮澤少年は、ここでも「アンコウを剝製にしたことがある」と言って周囲を唖然とさせたりしたが、初登場時は準優勝にとどまった。だがその後圧倒的な知識量で優勝を続ける。
出演者が度肝を抜かれた「ある回答」
たとえば、第6回全国魚通選手権の準決勝の、16分割された魚の写真の一部だけ見て名前を当てるクイズ。「ニベ」という魚が答えだったのだが、全体の16分の1、背びれのごくわずかしか見えないのに正解しただけでなく、「これ、『世界の海水魚』の写真ですよね」と、その写真の出典元のタイトルまで当ててしまった。だがそんなときでも、勝ち抜いた際には腕を高く突き上げ、ピョンピョン飛び跳ねながら喜びを爆発させる姿が印象的だった。
こうして「第4回全国魚通選手権」から5連覇を果たし、殿堂入り。そして少年だった宮澤正之は、ある時からハコフグの帽子がトレードマークのタレント「さかなクン」(ちなみに名付け親は、中村有志である)として、ユニークなキャラクターが人気を呼び、テレビでもよく姿を見るようになった。
その一方で、東京海洋大学から名誉博士号を授与され、さらに客員准教授に就任するなど魚類学者としても活躍している。このあたりは、改めていうまでもないだろう。いまや魚のことなら生態から美味しい食べかたまでどんなことでもわかりやすく教えてくれる先生として、唯一無二の存在だ。