軽ワゴンではなく小さなデリカ

デリカの名に期待する声が反映され、発売前の予約注文で全体の58%が4WDを選んだ。国内で販売される新車のうち4WDの割合は2割程度に留まるのが一般的だ。これはクロスオーバーSUVでも同様で、日本人の多くの人が2WD車を選んでいる。

開発陣も、デリカだけに4割くらいかと予想していたそうだが、6割という結果には驚いたそう。この結果は、4WDを強みにするという戦略が実度と成功したことを意味する。

さらに乗り換えは、ホンダ N-BOXとスズキ ハスラーが多いという。いずれもこだわりの強いモデルだが、それらとも競えるキャラクターに仕上がっているのだ。

開発者は、「デリカというのは、ひとつの世界観だ。デリカミニは、軽ワゴンというスタンスではなく、小さなデリカという点を重視している。それが評価され、これだけの支持に繋がったと感じている」と話す。

デリカミニの開発時期は、折しもパジェロやデリカD:5など三菱の看板車種を製造していた岐阜県加茂郡坂祝町にある「パジェロ製造」の閉鎖と重なっており、社内にも寂しさや厳しい空気が漂っていたという。

もしかしたらデリカミニには自身の強みを見つめ直すことで、三菱自動車自体を元気にするという裏テーマもあったのかもしれない。

4WDでありながら広々

デリカミニの強みはどこにあるのか。

軽乗用車の中には、アウトドアシーンでの活用を意識したものはある。本格性能でいえば、スズキ ジムニーがある。より日常の使い勝手や広さを求める層には、SUV風味の強いスズキ ハスラーやダイハツ タフトといったクロスオーバーワゴンが指示されている。

しかし、ファミリー利用や趣味を楽しむベースキャンプとして活用する場合は、どれも室内高が低いため、車内で着替えがしにくい。また、ラゲッジスペースの容量の手狭に感じる人もいるのも確かだ。その点、デリカミニはスーパーハイトワゴンをベースにしているため、車内は広い。

一方、N-BOXなどのスーパーハイトワゴンと比較すると、、地上高にゆとりがあるため、未舗装路走行でデリカミニが有利といえる。

つまり、デリカの名を冠した4WD車の信頼と広々ワゴン性能を併せ持つことから支持を集めたと推測できる。

いわゆるコスメチューンで終わらなかったこそ、デリカミニは激戦の軽自動車市場で存在感を放つことができたのだ。

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