もう「そういうの」は聞きたくなかったのに…
最後に、木村弥生氏と柿沢未途氏との「師弟」的な共闘関係に言及させてもらうなら「うーん、女性政治家の世界って、まだまだ男性の力を借りて“指導”されるのがひな形なんだなぁ」と鼻白らんでしまったことは否定しない。
そりゃもともとゴリゴリの男性社会、女性比率が1割だ2割だの日本政治界であるから、ノウハウを持っている人材が男性になってしまうのはまだ仕方ない。
けれど、もしあのYouTube有料広告掲出のアイデアが、仮に木村氏を支持する同世代のママ友などによって構成された草の根的な「陣営」で出たものだったとしたら、「うわー、公職選挙法の細部って難しいですよね、本当に悔しいけれどこれも勉強ですね」と、同じ目線で泣いて悔しがることができた気がする。
それが、既に衆議院議員を5期務める柿沢氏によるアドバイスだったというのだから、そりゃ柿沢氏本人も「違法だとの認識はなかったが、提案した責任を取りたい」と辞任するわけだし、自民党の世耕弘成参議院幹事長は「法の執行をつかさどる法務省の副大臣の立場であり、辞表提出は当然だと受け止めている」とバッサリ斬り捨て、同じNHKを古巣とする立憲民主党の安住淳国会対策委員長も「選挙違反を主導していた人が法務副大臣になっていたということで驚いている。しゃれにならない話」と容赦ないコメントを浴びせるわけである。
まして柿沢氏が木村氏の区長選突破のために自民党区議へ20万ずつの「陣中見舞金」をばら撒いていた……との「買収疑惑」も浮上した今、そんなリスキーなアドバイスをくれる柿沢先輩とタッグを組んでしまったことについて、木村氏はどう思っているのだろうか。
日本の政治では、いまだに男性の「先輩」の力を借り、「先輩のご指導」を立てて泳がねばならないのか――。
木村氏がそういう類いの人ではないと好感を持ってきただけに、そう見える結果になってしまった、ということが何よりも残念だ。木村氏の政治家キャリアは、強めにフィーチャーされてはこなかったものの、かつて安倍政権の女性活躍推進下で(当時まだ意思決定層にいたおじいちゃんたちの趣味と寵愛で)女性枠が強化された「安倍ガールズ」全盛時代に始まる。2023年のいま、誰か年長やキャリアが上の男性を持ち上げた「誰々“先生”のご指導で」ってのを、できればもう社会的に活躍する女性の口から聞きたくないな〜、そういうのダサいよね、って気分。
日本の女性政治家はまだまだ過渡期にある。