秋田県の佐竹敬久知事が四国地方の料理について「貧乏くさい」などと述べ、批判を集めている。神戸学院大学の鈴木洋仁准教授は「佐竹知事は、これまでにも耳を疑うような失言が多く、言葉をなりわいとする政治家として不適格なのではないかと疑わせる。一方、問題発言や不祥事が発生したときにしか話題にならない地方政治の現状には課題がある」という――。
秋田・佐竹知事の「貧乏くさい」発言
「貧乏くさいんです」
この放言を批判されている秋田県の佐竹知事は、何を指して、こう言ったのだろうか?
答えは、発言の直前にある。
「メインディッシュが鉄板で、誰が考えてもステーキです。ふたを開けたらじゃこ天です(*1)」
「じゃこ天」である。
じゃこ天の「天」は、「天ぷら」を指す。農林水産省が「次世代に伝えたい大切な味」を紹介する「うちの郷土料理」は、愛媛県南西部の八幡浜市や宇和島市では、魚のすり身の揚げ物を「天ぷら」と呼ぶ、と伝えている。
では、「じゃこ」とは何か?
底引き網でとれたいろいろな種類の魚(雑魚)でつくられていたため、「ざこ天」と名付けられ、それが変化して「じゃこ天」になったという説や、原料のはらんぼ(ほたるじゃこ)に由来して「じゃこ天」と呼ばれるようになったという説もある(*2)。
熱々の鉄板のふたを開けてみたら、主菜として「ざこ」とまとめられるような小魚の揚げ物が出てくる。落胆する佐竹知事の顔を思い浮かべる人がいるかもしれない。
「事実だもの」「謝らない」
問題は、発言後の態度にある。
発言直後に記者から問われた際に、「『事実だもの』と述べ、『謝らない』との考えを示していた」と、地元紙の秋田魁新報は伝えている(*3)。
同紙のオンライン版での記事が拡散されるなどしたため、翌々日の25日の午前10時半から秋田県庁で記者会見を開き、「四国についての発言は大変不穏当、不見識だった。心からおわびを申し上げたい」と謝罪している。
秋田市のギフトショップで、じゃこ天が「飛ぶように売れている」といった、微笑ましいニュース(*4)もあるものの、秋田魁新報が指摘するように、佐竹知事は、これまでにも耳を疑うような発言が多く、反省をしているとは言えない。そこに今回の真の問題があるのではないか。