新人研修に厳しさを求める企業

もう一つ、マナー講師のイメージを左右しているのが、企業の新人研修で行われる、マナー研修です。そこではビジネスシーンで欠かせない、あいさつのしかたや名刺交換のしかた、電話応対など、ごく基本的なマナーを一通り教えます。

そのときのマナー講師の印象はどうだったでしょうか。多くの人は、厳しく鍛えられた記憶が残っていると言います。

私自身も少し厳しく指導をすることがあります。マナーを覚えるくらいで、なぜこんなに厳しくされなければならないのかと疑問に思った人もいるに違いありません。もしそうだとしたら、それはマナー講師が主体的に厳しくしようとしているわけではない可能性もあります。

というのも、マナー講師が企業研修で厳しくなるのは、企業側から要請されている場合もあるからです。マナー講師が優しく、感じのよい講習をしたいと思っていても、企業側から「もっとビシビシやってくれ」と言われたらどうでしょう。業としてマナー研修を請け負う立場であれば、ビジネスマナーとして、クライアントからの要望に極力応えていかなければなりません。また、心の大切さを教えたいと言っても「そんな抽象的な話はしないで」と制されてしまう。それより一つでも、儀礼や型を教えこんでくれ、と言われることが多くありました。

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「型一辺倒」の研修を求める企業は多い

これらは、企業の新人研修で、実際に言われた言葉です。それでも私は可能な限り心を伝える努力はしていますが、おそらくほとんどのマナー講師は、企業側の意向に添って、厳しく型を教えるだけの研修を行っているのが現実だと思います。そのため、多くの社会人がマナーとは型のことだと勘違いし、うるさく言ってくるマナー講師に反感を抱くようになります。もちろん、「厳しく指導する必要はない」という企業もあるし、感じのよい、優しく指導するマナー講師も存在することをお伝えしておきます。

このように、マナー講師が何かにつけて批判される理由は、型一辺倒の研修を求める企業側の意向もあるということも、ご理解いただきたいところです。