「イスラエルvsハマス」が「中国vs台湾」に
その取材メモから要点を付記しておく。
○ハマスが、奇襲開始時に、大量のミサイル、ロケット弾を一気に発射した点
ハマスとイスラエルとでは、ハマスが軍事力でははるかに劣る。しかし、いきなり3000発のミサイルを撃ち込んだ。この数はイスラエルの想定にはなかったもので、イスラエルが誇る「アイアンドーム」と命名された鉄壁のミサイル防御網でも迎撃漏れが生じ、多くの犠牲者を出した。
○休日に攻撃をはじめ、虚を突いた点
奇襲攻撃をかけた日は、ユダヤ教の祝日シーズンの最後の土曜日(安息日)だったため、軍の兵士を含む国民の多くが休日を楽しんでおり、完全に不意を突かれた。
○陸海空の3面から同時に侵攻した点
ハマスの兵士は、イスラエルが境界に張りめぐらせていたコンクリート壁や鉄条網をブルドーザーなどで破壊し領内に侵入した。その速さは、イスラエル側が設置していた高性能センサーをも凌駕するものであった。
同時に、空からはエンジン付きのパラグライダーとドローン、海上からはジェットスキーで侵入し、陸海空からの一斉攻撃で優位に立った。
○イスラエル軍が地上侵攻に出た後、ハマスの守りが注目される点
イスラエルの全面侵攻が始まれば、今度は反対にイスラエルを中国、ハマスを台湾に見立て、戦力で劣るハマス側が地下壕などを駆使していかに防御するかが参考になる。
アメリカの兵力が中東に割かれるのも好都合
習近平総書記が「中国の夢」と位置づける台湾統一だが、上陸作戦を行う場合、幅が約130キロの台湾海峡、そして台湾本島には急峻な崖が多いという「天然の要害」が待ち構えている。台湾も国防力を増強させ、10万カ所ものシェルターを建設して防衛準備を進めている。
今回のハマスとイスラエルとの戦闘は、中国にとって、台湾の防衛網を打ち破るうえで、ロシアとウクライナの戦争とはまた別の面で格好の教材になるということだ。
重ねて言えば、アメリカ軍が、事態が鎮静化するまで、一定の兵力を中東に割かなければならなくなったという事実も、中国にとっては好ましいことだろう。