AさんとBさんの違いは、運用する2年間の収益率の順番だけです。Aさんは1年目の運用収益がプラス10%で、2年目がマイナス5%です。Bさんはその逆で、1年目がマイナス5%で、2年目がプラス10%です。

Aさん、Bさん、ともに1000万円から一度も資金を引き出さない、すなわち現役のときの資産運用であれば、2年目の年末には資産は1045万円に増えています。この場合には、収益率の並び方がどうなっていても、平均が同じであれば、結果である2年目末の残高は同じになります。

定額引き出しに潜む罠

しかし、生活費を引き出すような退職後の生活を想定すると、事態は変わってきます。

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Aさん、Bさんともに1年目の年初、2年目の年初にそれぞれ100万円ずつ引き出して、年金に上乗せする生活費にしようと考えます。その結果を図表1にまとめました。

ちなみに、みなさんの中にも、「退職したら、年金以外に毎月10万円ずつ、運用する資産から使えるといいな」と考えている方は多いのではないでしょうか。これは、資産からの「定額引き出し」と呼ぶ考え方です。

濃いブルーの欄がAさんです。2年目の年末の残高は845万5000円です。これに対してBさんはグリーンの欄で、2年目の残高は830万5000円です。

資料提供=フィンウェル研究所

当初の保有資産はともに1000万円で、毎年年初に100万円を引き出すことも同じで、2年間の平均収益率も同じです。しかし、2年後の年末残高は、Aさんが845万5000円で、Bさんが830万5000円と差が出ました。

すべての条件が同じなのに、Bさんの残高が少ないのは、収益率の並び方が違うからです。

前半に想定を下回る収益率になると元本が毀損する

ここでBさんのパターンに注目してください。

1年目にマイナス5%と平均を下回る収益率が発生したことで、元本が毀損きそんし、さらに定額の引き出しも元本を減らします。その結果、2年目に平均より高い収益率が生まれても元本が大きく減っていることから、元本の回復力が相対的に弱くなっているのです。